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第89話〜お風呂〜
「ハル!?本気!?」
「嘘は言わないよ」
「えっぁっ、ちょっとまって!」
「?」
脱衣所に着き南を降ろした後、急に慌てだした
「その…僕汚いから…」
「だから風呂に入るんだけど………」
「違くてッ!」
南は静かに服を脱ぎ、背中を見せた
南の背中にあったのは、痛々しい傷跡。
これは、藍川家にいた時の傷だろう…
でも、今まで全然気づかなかった。
いや、あえてか…?
思えばヤってる時だっていつも背中はベッドについたままで見せようともしなかった。
「…汚いでしょ?僕が穢れてる証拠。」
さっきまですごく甘い雰囲気だった気がするのに、一気に雰囲気が暗くなった。
それに俺は南のことを汚いとも穢れてるとも思わない。
俺はちゃんと南に伝えてると思ってたが、まだ言葉が足りないようだ…
「じゃあ、風呂入るか」
「!?」
話を聞いていたのかと訴えてる顔だ。
最近南の表情だけで何を考えてるか分かるようになった。
それがまた嬉しい。
「南が汚いと思ってても、俺は汚いと思わないよ。ていうか、その背中も南の一部なんだから俺は愛す。」
「ッ」
「…入ろっか」
南は静かに頷いた
しかし南は少し恥ずかしいということで俺が先に風呂で待つことになった……が。
遅くないだろうか………
時計を見ると5分経っている。
服を脱ぐだけで5分もかかるか?
「南ー?」
呼んでも返事はなかった
まさかまたいなくなったり……
急いで扉を開けると普通に目の前にいた。
良かった……
「どうしたの?」
南はなにかモジモジしている
「さっき、鏡で僕を見たら、ハルと全然違くて…
僕にももっと筋肉あったらよかったのに…」
南の最後の言葉に俺は聞き捨てならなかった。
もし南がムキムキになったらなんか嫌だ!
こう、なんと言えばいいかわからないが嫌だ!
これでも小説家なのだが、いい言葉が思いつかない。
とにかく俺は嫌だった
「それはダメ」
「えぇ?」
「今の南も充分いいと思う。てか好き」
「ぅっ………ハルがそう、言うなら………」
何とか認めてくれてほっとした。
俺は守られるより守りたい派なのだが、もし南がムキムキだったら守っていいか考えられそうになる。
逆に俺が守られそうだと思ってしまった………
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