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第97話〜指輪〜

南の指にそっと指輪をはめた。 「綺麗」 「ほんとだ。キラキラ光ってて綺麗...」 指輪をはめた南が綺麗という意味だったが、南は指輪のことだと思ったらしい。 でも、指輪も、指輪をはめた南もほんとに綺麗だ。 「!! この嵌め込まれてる石って...ほ、宝石?」 「うん」 「こんなにおっきい宝石なんて、絶対値段高いよね... は、働いたら返します...」 「そんなの要らないよ。俺があげたくてあげたんだがら。 ね、この宝石何か知ってる?」 南は静かに首を横に振った。 指輪を買いに行った時、宝石商に教えてもらったことを言う。 「アクアマリンって言って、南の誕生日石もこれ。 意味は幸福、平和、癒し、いっぱいあるんだけど、俺は特にその幸福がもっと南に訪れて欲しいと思ってる。」 「そんなに幸せになったら怖くなっちゃうよ...」 「いいんじゃないかな。それだけ幸せになれるなんていい事じゃん。怖くなっても俺がずっとそばにいるし、南にはずっと幸せでいて欲しいから。」 そして俺は、南と恋人繋ぎした。 「南の戸籍を復活させて、その後に外国で籍を入れよう。」 「ッ...」 「この国はまだ同性婚は認めてないから、外国で…」 気が早すぎただろうか... でもこれは本音だ。 南は何も答えない。 だが幸せそうに笑っていて、答えはもう分かった。 「ありがとう、南。」 「それは僕の台詞だよ。」 「じゃあ一緒だね」 「そうだね」 2人でクスクスと笑い合う。 これからこんな時間がもっと増えるのだと思うと、今から楽しみで仕方ない。 そんな幸せな空気に包まれながら時間は過ぎていった。 観覧車もそろそろ終わりそうだ。 俺は外していたサングラスとマスクをつけた。 観覧車から降りて少し歩いた頃、何故か視線を感じた。 南も気づいたらしく不安そうに俺を見る。 俺はなぜ視線を感じるか分からなかったのだが、どうやら南は分かったらしい。 南が教えてくれようとした時、いきなり見知らぬ男に話しかけられた。

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