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第110話〜目〜

 僕がじっと優さんを見ると、それに気づいた優さんがニヤァっとしたのが分かった。 「なっ、何ですか…」 「いや〜?別に〜?…あっ!そう言えば!」 「?」 優さんはおいでおいでと手招きするのでキッチンに向かった。 「はいこれ。」 「?ちょ、こ?」 「うん。あげる!」 甘いの好きだから嬉しいけど…なんで?? 「あは、困ってる。ほんと、可愛いよね南くんって。」 手が僕の顎へ伸びる。 なにか…嫌な予感がする。 「ッいや、」 後ずさって何とか距離を取れた。 少し驚いていた優さんはクスリとしたあと、含みのある発言を放った。 「なんもしないよ〜!…今は、ね。」 「え…」 「ねぇ。もし今ハルくんが起きてたらどうする? 僕怒られちゃうかも。ううん、怒られるだけならいいね。」 何を言ってるんだろう、この人… 「…ハルはそんなことしないよ。」 「分からないよ?人間って予測不可能な事をするからね。」 優さんも人間なのに… まるで優さんは人間じゃないみたいな言い方だ。 「ねっ、試しにやってみる?」 「試し…?」 試しって何。 優さんは何をしたいの。 わからない。 この人は何をしたいんだろう。 その時だ。 「ん…み、なみ?」 ハルが起きてしまった… 「あれ、なんで寝て…あぁ。優が運んでくれたのか?」 「そーだよー!」 「ありがとな。」 「ほんとだよもー」 …あれ? なんで…、そんな表情をしているの…? 優さんの目は………僕の知ってるあの目だった。

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