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第127話〜返信が出来ない男〜

〜晴也side〜  南がちゃんと家に着いたのか心配で、いてもたってもいられず奏斗に電話をかけた。 数コール目で奏斗が出る。 「もしもし。もう家には着いた?」 『ううん、まだだよ〜!今運転中〜。から後でまた掛け直すわー。』 なんだ。まだなのか。 俺はじゃあまた、と言って電話を切った。 いや待てよ。 別にいちいち電話しなくてもメールで報告してくればいいだろ。 俺は直ぐにメールを送った。 [後で電話掛けてこなくていいからメールで送って。] 少し時間が経ったあと返事が来る。 〔やだ〕 ………はぁ? 何が『やだ』だよ。少しイラッとしながらも返事をする。 [なんで] 〔晴って返信遅いし。晴の返事待ってたら軽く1週間は経つよ〜 それに俺も話したいことがあるから!俺長文書くの苦手〜><〕 返信が遅い………確かに、否定出来ない… 俺は返事を書くのをよく忘れてしまいがちだ。 普段メッセージが来るのは仕事の用事だったり報告だったりする。 そしてメッセージが届いても見るだけでなにも返事をしない。 それが習慣になったのか、奏斗から大事な用があってもメッセージを見て理解し、相手に返事をせず勝手に準備やらをしてしまうことがあった。 昔奏斗に『見たってのはこっちからも分かるんだからちゃんと返信しろ!返事がわからないとこっちも戸惑う!』と言われて確かに返事をするようにした。…………………4日だけ。 そう。癖ってのは怖いもので、俺はまたいつもの既読無視を決め込んだのだった。 それにはもう奏斗も諦めたのか何も言わなくった。  でも南となれば話は別。 直ぐに返信をする自信がある! 奏斗にそう伝えるも即座に拒否された… すると突如奏斗からはぱったりと返事が来なくなった。 そう言えば運転中と言っていたっけ。ならさっきまで赤信号だったのだとわかる。  俺は仕事をするかとソファから立ち上がった時、インターホンが鳴った。 「今度は誰だ…」 カメラを確認するとニコニコ笑顔の優で驚く。 今日は南との練習はないはず。何かあったのだろうか。 優を家へ入れるとまた沈むようにソファに座った。 「あれ?南くんは?」 直ぐに南がいないことに気づいた優。 「……奏斗のところ。 あ、これから南と練習する時は奏斗の家に…」 「ちょ、え!?どういうこと!!?説明して!!」 俺の言葉を遮り、大声で慌てている。 事情を説明した後、優は一気に真顔になった。 そして次の瞬間、俺の頬には真っ赤な手形がついたのだった。

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