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第164話〜顔出し〜

午後のサイン会が始まり、少し……変なファンが来た。 「先生…私、ずぅっっっっっと先生に会いたかったんです。」 「はは、ありがとうございます。」 「こんなに綺麗な人、私初めて見て……一目見た時から好きになっちゃったくらいなんですよ?」 あぁ………………そういう人か。  俺が顔を出し始めた頃だろうか。 途端に俺の顔が出回った。 その時はまだ俺は知らず、いつも通り買出しに行っていると不意に写真を撮られた。 盗撮かと驚いたくらいだ。 勿論直ぐに問い詰めた。 そして納得し、これから俺は顔を隠そうと決めたのだ。 そしてたまに、こういったサイン会などでここぞとばかりに自分をアピールしてくる者がいる。 今目の前にいる人のように……… 「先生…私、凛夢子って言うんです。このサインに、名前入れてくれませんか?」 「いいですよ。」 りむこ…か。 珍しいと思いながらも手を動かす。 「はぁ…っ、ありがとうございます…!家宝にしますね…!」 そう笑顔で言う彼女は、本当に嬉しそうだ。  それ以降は、もうさっきの様なファンは来なかった。 無事サイン会も終わり、俺達は少し早めの夕飯をとることにした。 「何か食べたいのある?」 「僕何でもいいよ。」 「そっか」 あれ? なんか、今の南不機嫌…? 「……南?どうした?なんかあった?」 「……分かる?」 「勿論」 そして急にモジモジしだした。どうしたのだろうか。 「呆れない?」 「絶対呆れない」 するといきなり頬をプクりとふくらませると同時に、俺の腕に絡みついた。 「僕…本当に酷いの…」

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