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第163話〜4〜

 結局、南が戻ってきたのは休憩が終わる5分前だった。 「ハルごめんね、遅くなっちゃった…!」 急いで来たのか少し汗をかいている。 「これ、いつもハルが飲んでるコーヒー!買ってきたの!」 へへっと笑った南に、さっきまでのモヤモヤが一気に消し去る。 俺はそれを受け取り口に運んだ。 南はぶどうジュースを飲んでいる。 少しドキドキしながらも、銀髪の彼について聞いてみる。 「……銀髪の彼、久しぶりに会ってどうだった?」 いや緊張しすぎではないか? なんだ『どうだった』って。 「えっとね、あの子位上 大雅くんっていってね、すっっごくいい子なの!」 「へぇ」 「それでね、位上くんハルの大ファンでね、すっごい話が盛り上がっちゃった。あ、新刊の本で…」 なんだろう… すっごい照れる………… 俺がキタヤ本人だからだろう。 「ちょ、南、なんか恥ずかしいからストップ」 「え?なんで?」 純粋な目で見つめてくる南に吃ってしまう。 「あっ、そういえば位上くん、ずっと笑顔でね、僕も嬉しくなったんだ! だからね、僕もずっとハルの横で笑ってるね!」 「ん…ありがとう」 可愛い。 急に俺をときめかせてきた……  けれど俺はここで少し疑問を抱いた。 あの位上くんって子……ずっと笑顔だったのか………… 俺が隙を見て彼を見た時、位上くんは1度も笑っていなかった。 しかし人と話す時はいつも笑顔。 なんだろう。少し………嫌な予感がする。

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