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第162話〜3〜

〜晴也side〜  サイン会中、ある男に目がいった。 見た目だけでいうとヤンチャそうだ。 彼の順番が来た。 「あの…いつも本読んでます。これからも頑張ってください」 見た目と違ってなんとも礼儀正しく、やはり人は見た目じゃないと思った。 俺も快くサインをし、時間が迫っている時不意に彼は南の名前を読んだ。 知り合い…だろうか。 後ろを振り向き、南の顔を確認するが誰かわからないといった顔をしている。 「ご、ごめんなさい…えっと……」 「っあ〜、そうだよな。こんな姿じゃわかんねぇよな」 俺達にわからない話をしている。 自分の名を名乗ろうとした時、運悪くスタッフさんが時間切れを伝えた。  午前のサイン会は終わり、南と楽屋に向かう。 南は未だにあの彼が気になっているのか難しい顔をしていた。 なぜか嫉妬してしまう。 他の男のことを考えている…… 俺は南の口に軽くキスをした。 「ッ!?!?ハル?!」 やっと俺の方を見てくれた。 「もう!今僕考え事してるの!それに誰か見てたら…」 「周りに誰もいないよ?」 「そうだけど…」 拗ねた反応だが、顔を見るあたり嫌じゃないのだろう。 素直じゃなくて余計に可愛く思えてしまった。 「僕飲み物買ってくる!」 「え、俺も…」 「ハルは有名人だよ!それに今ここはハルのファンでいっぱいだしすぐ気づかれちゃうよ…」 正論を言われて黙るしかない。 「すぐに戻ってくるね」 ふわりと笑った南は少女のようで、胸が熱くなる。 「あれ。南くんは?」 花さんが楽屋に入ってきて問う。 「飲み物買いに行きましたよ。」 「え?そうなんですか? さっき銀髪の男性といたんですけど、見間違いですかねぇ?」 えっ。 花さんが嘘をつくはずないし…… その時、俺の携帯がメールを知らせた。 [元同級生と会ったので、少しお話してきます! 彼もハルのファンだと思うから、沢山語れると思うの!] 文面を見てほっとした。 嘘をついたわけじゃなかった。 いや、疑ってもなかったけど………… 俺は今思ってることを打ち、いつ南が帰ってくるかソワソワしていた。

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