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第161話〜2〜
近くにカフェがあったので、そこに僕達は入っていくことにした。
「んーなに食おっかなぁ〜。藍川は何食う?」
「うーん…ケーキはまず食べたい。」
「はっ、相変わらず甘党だな!」
「位上くんこそ、甘いの食べようとしないじゃん……」
「俺甘いの苦手なんだよ。って知ってるか!」
「うん」
そう言いながらメニューを決め注文したあと、早速位上くんが僕に質問をした。
「なぁなぁ、なんで藍川はあそこにいたんだ?」
「…え?」
僕があそこにいたらいけないのかな…………
「っだぁ!!違ぇっつの!んーとな…なんで、ファンのところに並ばず先生の後ろにいたんだ?つうこと!」
あぁ…、驚いた。
てっきり、僕があそこにいたら可笑しいと言われてるかと……
でも、なんて説明しようか。
ハルは有名人だし、いくら元同級生でも…………
僕がなかなか言わないのに気づいた位上くんは、申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん、誰にだって言えねぇことはあるよな。悪ぃ…………」
「あ…いや、こっちこそ…」
なんとなく気まづい雰囲気になる。
僕はそれが嫌で、あからさまに話を逸らした。
「っていうか!位上くん、キタヤ先生のファンなの?!」
「うぉ、びっくりした。
……………ファンっていうのかな?新刊でたら必ず買うし、何度も読み返しちまうくらいあの人の本は好きだけど…」
「それファンだよ!
あのね、僕もキタヤ先生のファンなの!」
元同級生だとしても、ファンと交流出来てる…!
先生のことについて語れる人がいる…!
なんとなく嬉しくなる。
5分を過ぎた頃には、もう僕達はキタヤ先生の話で持ちきりだった。
「んで、あの本はすっごい胸熱だったよな!!特に最後とか、」
「わかるっ!あの時の主人公の行動には驚いたけど、それがキタヤ先生の本らしいっていうか…」
「そうなんだよなぁ!
………なんか、俺こういう見た目だからか、本が好きってだけでよく驚かれるんだけど、藍川とこうして好きなことを話せるの嬉しいわ!」
その言葉に僕の胸が暖かくなる。
ちらりと時間を確認すると、もう間もなく休憩時間がなくなりそうだった。
「あっ、もう時間だ!」
「まじか!いけねぇな、藍川と話すのすっげぇ楽しくて時間なんてあっという間だったな…」
位上くんは驚いた顔をしていて、本当にそう思ってくれているのだと分かる。
「………なぁ、連絡交換しねぇか?」
「え?」
「いや、ほら!また話してぇなって…ダメか?」
「〜〜全然!ダメじゃない!」
連絡を交換した後、僕達はその場でばいばいした。
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