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第160話〜懐かしの〜
「えっ!?だ、」
声をあげようとするが、口を抑えられる。
「しっ…」
「…?!」
顔が見えない。
誰なのかさえ、分からない。
僕が落ち着いたのに気づき、抑えてた手はやっと離れ、その人物がやっと分かった。
「あっ!」
そう、さっきの目が合った彼だ。
「久しぶりだな。藍川」
また僕の名前を呼ぶ。
けれどやっぱり、この人が誰か思い出せなかった。
「っと、そうだった。藍川は俺が分からないんだった。
俺、位上!位上大雅!ほら、中学の時同じクラスだった……」
「えっ!?あの位上くん!!??」
思い出した……………
でもちょっと…いやかなり、見た目の雰囲気が変わっていて正直信じられない。
だって、僕の記憶の中の位上くんは一言で言うなら真面目だった。
しかし今はどうだろう。
コンタクトにしたのか眼鏡を外している。
それに両耳に沢山のピアス。髪はなんとシルバーだ。
「ほ、本当にあの位上くん…………?」
僕の思いがわかるのか、位上くんはケラケラと笑っている。
「あーやっぱりそう思うよなぁー!わかるかる、この前同窓会行ったらみんなに避けられたもん!
見た目変えてもやっぱりぼっちだったわ!」
「同窓会……」
僕の一言に位上くんは急に焦り出す。
「っあー!ごめん、今のなし、忘れて!
その……………いや、ごめん…」
それは何に対しての『ごめん』なんだろう……
多分、僕の家族のことを思い出させたことなのだろうか……
中身は全然変わってなかった。
位上くんは優しいままで、やっぱり僕のことを考えてくれる。
昔と一緒だ。
「その…俺、さ……藍川と話してぇこと沢山あって……このあと時間あるか?」
「うん、休憩時間の間だけなら」
「ッそっか!!んじゃどっかで食べながら話そうぜ!」
僕は急いでハルにメールをした。
返信がすぐにくる。
[いいけど…なるべく早く帰ってきてね。俺が寂しい]
その言葉にクスッとしてしまう。
トイレでの怒りを忘れてしまうくらいにだ…
そして僕達はゆっくり話せるところに向かった。
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