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第177話〜あの子とあの人〜
〜凛夢子side〜
あぁ、愛おしい………
狂おしい………
私だけを見ていて欲しい。
私だけを考えていて欲しい。
そんな思いが募り、つい……あの子を攫った。
あの人はどんな顔をするだろうか。
攫ったのは私って気づくだろうか。
いや、絶対に気づく。気づいてもらわなければ私が困る。
ピロン
メールを受信した音がなる。
「あっ。壊れちゃったんだ。」
動画が添付されていたので再生する。
そこには涙を流し、密かに笑っているあの子がいた。
変わり果てたあの子を見て、あの人はどんな風になるんだろうか。
その後が読めなくて、ワクワクしてしまう。
少し……じっとしすぎたかな。
ちょっと散歩したいかも。
そう思ってロビーに出ると、あの人がいた。
なんと強運だ。こんなに早くあの人に会えるなんて………
やっぱり私達は運命の糸で繋がれているんだ…!
「ッ先生!」
そう声をかけると、驚いた顔をしていた。
「凛夢子さん…?なんでここに?」
「え?先生もしかして分からず来たとか…?」
「ッやっぱり、あなただったんだ。」
やっぱり…?
私のことを考えてくれてたんだ……
感動してしまう。
「私も………私も、あなただけを考えていました。」
自分の思いを告げるが、それはすぐに絶望した。
「俺がいつも考えてるのは南のことだけだよ。」
「…どうしてですか?」
「愛してるから。」
即答だった。
いや、今のは聞かなかったことにしよう。
うん。それがいいわよね。
そうだ…!
私、先生に言いたいことがあったんだ…!
「先生!私、聞いて欲しいことがあって……」
「うん?」
「本当は終わってから言おうと思ったんですけど……やっぱり、今言おっかなって。」
「だから何??」
そのわからないって言う顔も素敵だ。
次はどんな顔をするのかしら……驚く?それとも……喜ぶ?
「顔です。今度、少しずつですけど、あの子の顔になろうと思って。」
「そっか。」
え??
驚かないの?喜ばないの?
もっと私に興味を持って欲しいのに…
どうしてそんな淡々とした、興味ないような顔をするの?
どうして???
意味がわからなかった。
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