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第193話〜3〜
次の日、俺が廊下を歩いているとたまたま藍川くんと会った。
「あ、藍川くん……」
声をかけるとすぐに彼は顔を上げる。
「あ、この前の………あっ!」
「!?」
突如声を上げたので驚く。
「それ!その持ってる本!買ったの?!」
「え?あ、うん。」
「えーいいなー!僕も読みたかったんだけどね〜…」
「?藍川くんの家お金持ちらしいしこれくらい…」
あ、しまった。
途端に藍川くんの顔が暗くなったのが分かる。
「あー……うん。そうなんだ〜。うち親が厳しくて……」
地雷を踏んでしまった。
彼はその後『じゃあね』と言って去ろうとする。
このままだともう話せないかもしれない。というか、話しにくいかもしれない。
それは嫌で、勇気を出して呼び止めた。
「ぁあの!これ、貸しましょうか?!」
「………え?」
彼の反応が怖くて前を向けない。
「その、これオススメだし…。あぁ、いや、嫌なら別にいいんです…!!」
俺はそっと上を見て驚いた。
藍川くんの目は、少年のようにとても輝いていたからだ。
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