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第195話〜5〜
その報告を聞いた時、俺だけでなく、学校中が悲しんだ。
女子達は『告白すればよかった』という後悔、男子達は『もっと話せばよかった』という後悔。
俺は………もっと仲良くなりたかったという後悔。
藍川といない時、いつかあそこに出かけてみたい、いつか一緒にあれを食べに行きたい。何度そう思ったことか。
そして悲劇はまだ終わらなかった。
「………は?」
家に帰ると、母が机の前で泣いていたのだ。
理由を聞くと、親父が借金を残して行方を眩ませたらしい。
あのクソ親父だと納得してしまう部分があるが、連帯保証人が俺の母親になっていたのだ。
母親1人では一生返せきれない金額。
俺は行きたい高校を諦め、定時制に行くことした。そして時間があればたくさんのバイトを掛け持ち。
いろんなバイトをして、出来るようになってくると自然と自信が湧いてきて、いつしかこのオドオドした性格は治っていた。
バイトをしている時、派手な客が来た時に俺は中学の頃を思い出した。
俺は藍川の為に見た目を変えようとしたのに、その本人はもう手の届かない場所へ行ってしまった。
けれど、空からでも見ていて欲しい。
俺はここまで変わったんだ!もうあのガリ勉じゃないんだ!という所を見て欲しくて、髪をグレーに染めた。
ずっと長かった髪を短くし、顔がはっきり見えるようにもした。
お洒落をした事がなく、初めてピアスもつけた。
俺が見た目を変えると、何故か女達が群がってきたのがとても不思議だった。
俺は俺なのに、何故か俺自身を見てもらっていない気がしたからだ。
どんなにいろんな人と付き合っても、いつも俺の頭の片隅にはあの頃の藍川がいた。
ある日、何気なく見ていたニュースに、藍川の家のことが書かれていた。
ニュースキャスターは、『三男が亡くなったことに…』となっているが、絶対藍川南のことだろう。
生きていたんだ…!嬉しくなった。
けれど苦しくもなった。
俺は今まで何も気づかず、南はずっとあの家で苦しい思いをしていたのか、と。
俺は今でも本が好きで、特にキタヤって人の本は凄く気に入っていた。
もし藍川も読んでいるなら、絶対に気に入っているであろう本。
そして、バイト場所の近くであの人のサイン会があると知り、すごく嬉しくなった。
休憩時間の合間に行こう。そう思ったら、あの頃と変わらない顔の藍川がいた。
けれど、何故そこにいるのだろうか。
だが時間が無く、あまり話せないでいた。
しかし連絡先はゲット出来たんだ。
何度も藍川の連絡先を見つめた。
そして今日、俺はその連絡先を使い、藍川を呼んだ。
もう藍川とあの人の関係はわかっている。恋人なんだろう。
ネットで調べたらたくさんの写真がでてきた。
藍川の顔は隠されているが、知る人なら分かる。あれは藍川だ。
俺はあの人から藍川を奪おうとなんて思っちゃいない。
ただ、俺の気持ちを聞いて欲しくて………
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