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第196話〜最後の〜

 俺が気に入っている場所。 ここは人があまり来なくて、絶好の息抜きができる場所だった。 今日はこの場所で藍川に告白して………諦める日。 連絡をして、5分程で藍川は来た。 「来るの早かったな。」 「あ、うん。ハル、じゃなくて、キタヤ先生が送ってくれたの。」 じゃあ近くにあの人がいるということか……。 というか、 「いちいち名前変えなくていいよ。もう分かってるから。」 「え?」 「あの人、はるって名前で、藍川の恋人なんだろ?」 「あ、うん…。あだ名みたいなものだけど…。というか、恋人じゃないよ?」 は? でもあの写真に写ってるのは完璧藍川だろう。 俺が困惑していると、直ぐに恥ずかしそうに藍川は口を開いた。 「その…こ、婚約者…」 あぁ…なるほど。婚約者、か。 益々告白しにくくなっていく。 けれど、藍川は俺の用事が気になるらしく、話題を振ってくれた。 「その、話したいことって何かな??」 俺が4年間秘めていた想いを、今伝える時が来た。 「俺、藍川の事が好き。恋心を抱いてる。」 藍川はわかりやすいほど驚いている。 「えっと、その、ごめんなさい…!僕、もう心に決めた人がいるから…」 「うん。知ってる。俺の気持ちを聞いて欲しかっただけなんだ。」 「そう、なんだ…」 気まずい空気が流れる。 早くこの空気から逃げたくて、精一杯明るい声を出した。 「その、さ!勿論諦めるよ!でも、また友達になってくんねぇかな…」 「も、もちろん!」 俺は最後に、本当に最後だ。 藍川にハグをした。 「えっ、えっ!?」 予想だにしないことに藍川は驚いているが、離さない。 あと少しだけ…もう少しだけ…これが最後だから……。 1分間ほど藍川に抱きついていた。 その間、何度も俺と離れようと藍川は試みていたが、俺の力が強すぎて結局離れることは出来なかった。 「ごめん。ありがとう。これで諦められる。」 「あ…そっか。」 「また…会ってくれる?」 「…ごめん」 やっぱり強引だったからかな。 俺が悟られないように落ち込んでいると、藍川の口からは信じられないことが伝えられた。 「僕、外国行くんだ。」

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