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第197話〜意見〜

〜南side〜 位上くんの告白には正直驚いた。 その上ぎゅーもされたんだ。 僕にはハルがいるから、何度も押し返したのに、どんなにやっても位上くんは離れなかった。 でもその後、あれが諦めるためのぎゅーだったと知り、僕はもう何も言えなかった。 あんなに強く抱きしめられて、本当に僕のことが好きだったんだと分かったから…… けれど、僕が外国に行くことを伝えると、位上くんは急に『はぁ!?!?』と叫び出して、つい僕もビクリとする。 「い、かみくん??」 「なんで?遠いじゃん!すぐ会えねーじゃん!」 「その…あっちで結婚して、そのまま住もうって…さっき…」 「さっき!?」 「うん…」 そして1回ため息をしたあと、位上くんは口を開いた。 「俺、今から藍川の友人として意見を言う。 そんで、それを考えるのは藍川だ。別に俺の意見を無視しても構わない。」 「うん…」 さっきよりもすごく真剣で、こっちも緊張してしまう。 「南はさ、あっちで結婚して住んで、そのあとは?」 「働きたい」 「どうやって?言い方キツいかもしんねーけど、藍川は日常会話レベルの英語は話せるのか?」 「それは……」 できない。話せない。 僕の英語レベルは中学2年生まで。 話せても少しだけだ。 「これは俺の我儘なんだけど、もうちょっと日本にいろよ。 んで、学校に通ってみて、勉強したらどうだ?」 「…学校。」 「その、良かったら俺と同じ学校とかどうだ?ほら、知り合いがいた方がいいかなって!」 位上くんの意見は魅力的だった。 その上将来のためにもなる。ハルとずっといたいから、僕はその話をハルにしようと決め、位上くんとは別れた。  少し歩くと、車の中でハルが待ってくれている。 僕が近くまで来ると、すぐに扉を開けてくれた。 「位上くんの話ってなんだったの?」 「えっと、告白…されて…」 「へぇ。結構早かったな…」 「え?」 ハルの言葉が分からず、つい聞き返してしまう。 「位上くんとちょっとしかいなかったから確信は持てなかったんだけど、『あ、多分こいつ南のこと好きだなぁ』って。」 「え!?」 思いもよらぬ言葉につい大きい声を出してしまった。 というか、少ししか話してないハルでさえも分かったのに、僕は今まで気づかなかったって、もしかして鈍い……!? なぜか僕はショックを受けていた。 そのまま、車は走り、ハルの家へと向かっていったのだ。

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