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第206話〜きみと。〜
〜南side〜
ピピピピと、アラームの音で僕は起きた。
「ぅ、ん?」
隣を見るとハルはまだ寝ている。
今日は僕が仕事でハルが休みなので早めにアラームを止めた。
「ん、みなみ……おはよ」
眠そうなのにちゃんと挨拶をしてくれる。
それに寝起きですらこんなにかっこいい僕の夫。
「おはよう」
そう言うと、何故かハルは起き上がった。
もう寝ないのだろうか。
「朝ごはん作るよ」
「え!?いいよいいよ!もうちょっと寝てて!」
「んー、南と少しでも一緒にいたいから寝たくないかな。」
「っ〜〜〜〜〜〜!!」
朝からこんな言葉を言われたら仕事に行きたくなくなってしまう…!
しかし仕事を休むわけにはいかない。
僕は指輪を薬指につけ、支度を始めた。
5年前に貰った婚約指輪とはまた違った指輪。
クンツァイトやシトリン、スフェーンなど、色んな宝石がついた指輪。
僕はそれを薬指につけ、椅子に座った。
一年前、僕達はこのカナダに来た。
僕達の結婚式にはハルの家族や位上くん、東さんに優さんに、ハルの昔の職場の人も来ていた。
僕の家族は来ないけど、それでも僕は幸せだった。みんなが僕達を祝福してくれたから……
位上くんは最初、結婚式に来れるかどうか微妙だったらしいが、ハルのお父さんも結婚式に行きたくて駄々を捏ねたらしい………
それで仕事を休み、行けたそうだが……申し訳なくなった。
なにか大切な仕事だったらどうしよう、とか支障をきたさないか、とか。
でも本当は嬉しかったのもあった。
僕は今飲食店で働いている。
たまにハルも来ることがあって、その日は1日頑張れる。
それに、日本にいた頃僕はハルに沢山迷惑をかけた。
少しでも恩返しがしたくて、できることはなんでもやっている。
「南?どうしたの?そんなにお腹すいてる?」
僕はいつの間にかハルを見つめていたらしい。
それに気づいたハルがいつもの綺麗な顔で話しかけてきた。
「ううん!なんでもない!」
何故か恥ずかしくなって顔を背けてしまう。
ご飯を食べながら僕は結婚した次の日を思い出していた。
『僕今すごい幸せ』
『ふふっ、俺も。
ねぇ…これからも俺と一緒にいてくれますか?』
『もちろんだよ。』
『俺はもう南無しじゃ生きられないね。』
『僕も。ハルがいなきゃ嫌。』
『ずっと南といるって約束する。』
『僕も約束する。』
あの時の言葉を僕は一生忘れないだろう。
「南手止まってるよ。どした?」
「あっ、ううん!考え事してた!」
僕は急いで朝ごはんを食べて、ギリギリになるまでずっとハルとくっついていた。
「南ー?そろそろ時間だよ。」
「うぅ〜……離れたくない……」
小さい声で呟くと、ハルが急に抱きついてきた。
聞こえていたんだろう。
「今はこれで我慢してね。」
そう言ってハルは僕のおでこにキスをしてくれた。
「帰ったら口にしてね?」
「もちろん。」
そんな約束をしながら僕達は玄関に向かう。
「それじゃあ、いってきます」
「うん。いってらっしゃい」
僕は笑顔でハルに挨拶をして仕事場へ足を運ぶ。
早く、早く仕事を終わらせて家に帰る。
家に帰ってハルにキスをしてもらう。
自然と笑みが零れた。
これからも僕達はこんな風に生活をして、いつまでも一緒にいるだろう。
おじいちゃんになっても、いつまでもいつまでも………
〜END〜
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