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 すべては選択の連続。  あれを選んだ、これを選んだ。赤信号で横断歩道を渡ってトラックに轢かれるのも、片思いの女の子に告白してこっぴどく振られるのも、全て選択の結末。  すべての選択が直接結果に関わるわけではない。そう、部活が休みの日に寄り道せずに家に帰った、そんな選択が、三年後の現実を連れてくることだってある。むしろ、こちらの可能性の方が高いのだろう。  なにが言いたいかって? それは、この現実は全て自分が選び取った故に生まれたということだ。それ以上でも、以下でもない。全部自分のせい。  だから、人のせいになんてしない。誰にも罪をなすりつけない。  始まりも終わりも全部抱えてやり過ごすしかない。黙って、受け入れて。手を伸ばさずずっと蹲っているという選択をした。  抱えた腕には自分の足しかない。それでいい。誰にも知られたくなかった。知られたら伸ばしてしまいそうだった。受け止めてと叫んでしまいそうだった。喉が張り裂けるまで現実を呪う言葉を叫び続けてしまいそうだった。  全部。そう全部、自分が悪いんだ。だってこれを選んだのは、誰でもない自分なのだから。  捨てて、捨てて、何も大切なものを抱えないと誓った。嘘をついて欺くと決めた。己にさえ嘘をついた。脳に偽りを刷り込んで、これが幸福なのだと唇に笑みを乗せた。  簡単だった。手のひらの大きさほどの舞台の上で、自分が自分を騙す嘘を吐く。笑って、笑って。そうすれば何もかも上手くいくのだと思っていた。  何もかも騙せるのだと。  だからこの腕を掴まれたとき「なんて無駄なことを」と思ったのを覚えている。その声に懐かしさを感じて、しかし、どうしてここに現れたのかと問おうとした口が、その言葉を吐くことはなかった。  再会なんてしたくなかった。その顔を見たくなかった。できることならば、一生思い出だけを抱えて生きていきたかった。  現実は上手くいかなくて、深谷那月は再び虚ろな舞台の上に立っている。

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