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もう要件は終わりだと踵を返すと、後ろから腕を捕まれ引き留められた。 「ちょ、」 痛い そう言おうとしたら、由李くんくんはパッと手を離した。 「あ、ごめん!触れられるの嫌いだっけ。」 「いえ、特定の人物なら大丈夫です。その…力が強くて…」 「あぁ!それはごめん!!!………でも良かった。」 「え?」 「俺に触れられても大丈夫なんでしょ?」 「まぁ…」 「えーじゃあなんでダメなのー?」 話が戻った… ダメ…というか、きっと迷惑をかける。 俺のこの性格と病気は人を傷つけてしまうから……… 「…迷惑を、かけたくない…」 「え?そんだけ?俺それで振られたの?」 「…は?」 そんだけ…って、俺が気にしてることをそんだけって…! 少し………少しだけだが俺はイラっとしてしまい、つい言葉が刺々しくなってしまった。 「そんだけって言わないでくれます?俺なりに気にしてること何ですけど。 それに振られた理由では充分じゃないんですか?」 「いやいや!全然っしょ!」 何だこの軽い返し!!!! 俺と由李くんとの温度差が激しすぎる!! 全く話が進まず、痺れを切らした俺はついに怒りゲージが爆発したのだった。 「もう!!ハッキリ言いますけど、好きじゃないので付き合いたくありません!!」 これでもう諦めるだろう。 そう思い由李くんの顔を見ると、彼は何故かにんまりと嬉しそうに笑っていた。 ………ドMかよ いやそこはどうでもいいや。 なぜ笑っているのか俺が聞こうとした時、由李くんの大きな声が教室内に響き渡る。 「っしゃ!俺決めたかんね!ぜってぇちよをオトす!!んで付き合う!!これで万事解決!!!」 いや全然…! 理解したくなくて俺はただ立ち尽くすしかない。 もう何も考えたくなくて、俺はただ一言。 「もう、好きにして下さい」 そう言ってしまった。 それを聞いた途端、『やったぁぁぁぁぁぁ!!!!!! あ、ちよばいばーーーーい!!!!』と叫びながら由李くんは勢い良く教室を出たのだった。 最初の頃より印象が全然違くて戸惑う。 あのチャラチャラした由李くんはどこへやら……… 今はただ、知能がうんと下がった小学生にしか見えない。 すっかり疲れ果てた俺は帰るのだるいな…などと考えていると、テレパシーで感じ取ったのか車に乗った兄が校門前にいた。 「兄さん!!」 「やーくん、おかえり。」 「ん、ただいま」 俺は兄の顔を見て、自然に笑が出ていた。

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