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第7話

一瞬彼は目を見開いて驚きオレを見返したが、表情を戻すちうポンポンと頭を撫でられた。 「セルジュ、噛むって俺の番になってくれるって?そんな同情とかはいらねえし、運命のなんちゃらは嘘だから気にするな」 辛くないわけじゃないけど慣れているから大丈夫なのだと告げて、自らの身体を見下ろした。 「同情じゃない。そりゃ、オレは嫁ぎ先を逃げ出したΩの子で、βに育てられた身分も何もないαだけど、いつかは成り上がってやるから」 まるでプロポーズだ。 多分、そうだ。 アンタをヒートの苦しみから救わせて欲しいと心から願った。 彼はそっかあと呟いて、オレを顔をひどく嬉しそうに見返した。 「オマエは、まだヒートに酔ってんだと思うけどな。気持ちは純粋に嬉しいよ。一緒に子供を作ってほしいし、だから、ヒートが終わって次のヒートも俺を噛みたいと思ってくれんなら同じこと言ってくれよ」 見合いしたと言っていたが、普通の気位の高いαの男に、この性格じゃあ断られてしまうのはわかる。 ガツガツしてそうなのに、肝心なとこで人のことばかり気にしている。ヒートはαを惑わせるためのものなのに、それを利用すらもできないお人好しだ。 これじゃあ、婚期とか言ってられないだろう。 「なに悠長してんだよ。1年に1人産んだとして、5人産むのに何歳になるんだ?アンタも歳考えろよ、高齢出産はキツイだろ」 「くはっ、セルジュ、おもしれえとこ心配すんだな」 軽くベッドで身体を伸ばして、彼は困ったような顔をオレに向けた。 「実際はさ、それが運命だっていうなら受けて立つみたいな意地で5人とか言ってるだけ」 饒舌に語りながら投げやり気に言うが、面白がるような表情で唇を舐める。 「確かにオレが会ったΩの奴らは運命に恨み言しか言ってなかった」 「俺は頭もいいし、身体能力ずば抜けてるし、顔もイケメン過ぎるだろ。Ωでプラマイゼロ、いやそれでもプラスだからさ」 普通の奴が言ったら引くが、彼には差し引きしてもあまりある能力があるのは頷けた。 運命を受け入れた上でそれを、超えようとする彼が勇ましく思えた。 「オレは、次のヒートもアンタを抱ける気がします」 彼はオレの言葉に何も返さず、ただ目を閉じて彼は口元に笑みを刻んだだけだった。

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