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第6話
互いに精魂尽き果てて、我に返ると既に出勤時間で、オレは局長に副局長のヒートの事と事情を話して休暇を貰った。
漸く落ち着いたらしい彼は、ぐったりとした様子でオレをチラチラ見ながら、少し肩を落として聞いてくる。
「訴えないのか」
「アンタが悪いわけじゃないです」
「どうかなあ。俺、子供ほしいし」
そういえば、避妊とかしなかったのに今更ながらに気がついた。
「なあ、こんな辛そうなのずっと続くんすか?」
Ω自体希少であまりみたことがないが、普段はクスリで抑えて生活しているらしい。
オレの母もΩだったらしいが、覚えていない。
「あ?ヒートのことか。クスリきかねえからな。番ができりゃ収まるらしいけどな。辺境じゃ、βの仲間しかいなかったから分からなかったが、こりゃヒデェ。αのフェロモンヤバすぎだよな。訴えられる前にオヤジに言って、また辺境に戻してもらうかな」
肩を揺らして笑いを浮かべて、ごめんなとオレの頭を撫でる男をオレは放っておけない気持ちでいっぱいになった。
「アンタ、Ωって分かった時どう思った?絶望した?」
「よくわかんなかったな。オメガーって強そう?くらいな感覚。オヤジは俺を後継者にするつもりだったから今でも残念がってはいるけどね。…………絶望したのは、最初のヒートだ…………薬が効かないなんて分からなかった……からな。大事な人を傷つけた」
「薬きかないの…………辛いっすよね」
「俺はいいけど…………人を傷つけちまうからな。精神どんだけ鍛えても…………駄目みたいだし」
ふっと笑った表情が、何故か悲しいくらい胸を掴まれて思わずグッと抱き寄せた。
「オレがアンタを噛んだら…………ヒート収まるか?」
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