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第28話

 あの人達も、もう僕には関わらなければいいのに。  ──仕事はどうだと訊ねられたから、楽しいですよと答えたら酷く冷め切った声色で、全くお前は間宮の恥だと、また両親にガッカリされた。  やっぱり疲れた。どうせ期待に添えないバカ息子なんだから会食などに呼ばなきゃいいのに。  おかげで久しぶりに見たくもない、あの夢にうなされた。  目が覚めたのはもう昼過ぎで、腹立たしいほど(きらめ)いた春の日差しが目に痛い。陰鬱な気持ちを撒き散らし、世界を(けが)してやりたくなって、休日の公園に散歩に出掛けた。  のどかでうららかな陽光がそこらじゅうを眩しく照らす。キラキラと、コロコロと、光の珠が弾んではしゃぐ。 「にーちゃーん、おにぎり、そっち行ったー」 「ばっか、眞奈(まな)。リード離しちゃダメだってー」  何故だかそこだけ輝いて、生物発光を起こす新種の生き物かなと馬鹿な事を考えた。 「ごめーんにーちゃん。でもおにぎり逃げないよ。ね。よしよし」 「オレもー。よしよし、いい子だな。よしよし、よしよし、よーしよしよし。うわっ」 「ちょーなめてる」 「あは、くすぐった……ぶははは」 「あはははっ」  きれい……。  あそこにあるのは僕が持っていないもの。  いいなあ……。  僕には手に入れられない。  僕も──欲しかったな──。  …………ねえ……僕は……何が悪かった?……どこが、だめだった──?  ──胸が苦しい。息が止まりそうだ。  あれ……?  ────なんで涙が出るんだろう。  これは夢かな……?  今ぶつかったのは公園で見たあの少年。  この学園の生徒だったんだ。 「廊下を走ってはいけませんと、言われる理由が分かりましたか」  ああ、こんな風に説教じみた言い方をするつもりはなかったのに。 「転ばせてしまってすみませんでした。怪我はないですか」  謝って、くれるんだ。やっぱり素直で良い子だな。一年生なら、授業は先の話だなあ。  このペンギン……。あの女の子かな。兄妹だろうな、仲が良くて微笑ましかった。 「かわいい」  見つめる頬が紅くなる。 (本当に──かわいいな──)  あたたかい、やさしい気持ちで満たされる。  あの日みつけたものだ………手を伸ばせば、触れられる。また胸が、苦しくなった。  ああそうか──どうしよう。  僕は彼に恋をした。  ── fin ──

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