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「亜鷹 、いい加減にしろ」
昴 は眉間にしわを寄せると、ベッドに横になる大きな身体を背後から叱り飛ばした。
亜鷹は昴の方をちらりとも見ずに、そそくさと頭から布団を被ると姿を隠す。
まるで聞く耳持たないといった亜鷹の態度に昴の顔がひくつく。
業を煮やした昴は、ベッドにつかつかと歩み寄ると勢いよく布団を引き剥がした。
「亜鷹、観念しろ……っわ!?」
隠れていた亜鷹の姿を暴いたと思ったのも束の間、気がつくとベッドに押し倒されていた。
両手は顔の横で縫い止められ、天井を背景 に男ぶりのいいが昴を見下ろしている。
「そんなに顰めっ面するなよ。かわいい顔が台無しだろ」
亜鷹はうっとりするほど甘い声で囁くと無防備な昴の首筋に舌を這わせてきた。
「こらっ…やめ…っぁ…んっ」
抵抗しようと身を捩るが、昴よりも鍛えられた肉体を持つ男に力で敵うはずがない。
ねっとりした柔らかな舌や唇が皮膚の薄い首筋を辿るたび、昴の息が甘く綻んでいく。
「なぁ昴、しようぜ…お前が欲しい」
甘えるように鼻を擦りよせながら服の下に潜り込んでこようとする手。
その手をすんでのところで掴むと、昴は般若の形相で亜鷹を睨みつけた。
「おい、こんなんで誤魔化せると思うなよ」
「………ッチ」
低い声でピシャリと跳ね除けると、亜鷹はそっぽを向きながら小さく舌打ちしたのだった。
「人の姿でいるなら、人としての生活に慣れなきゃいけないって昨日も言っだだろ」
猛禽獣人として亜鷹の正体を知り、また昴自身もその力に目覚めてから数日。
一つ屋根の下で亜鷹との生活が始まった。
今まで鷹小屋にいた亜鷹と人間の姿で生活を共にする。
それは昴にとっても亜鷹にとっても、初めての事で毎日が手探り状態だった。
特に長い間、獣として生活してきた亜鷹にとって人間の習慣というものは理解できる部分とできない部分があるらしく、それを巡っては度々衝突していた。
「観念して風呂に入れ」
「風呂は嫌いだ」
「なんで嫌いなんだよ」
「大事な羽根が濡れる」
「その姿で羽根はないだろ」
そう言うと、これ見よがしに翼だけを背中に出してみせる。
そう、亜鷹はとにかく風呂が嫌いなのだ。
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