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この子どもの駄々のような亜鷹の風呂嫌いをどうしたもんかと昴は悩んでいた。 やはり初めての日、一人で入らせたのが間違いだったのかもしれない。 その日、亜鷹は捻ったシャワーから噴き出てきた熱いお湯を頭から浴びてパニックを起こし、鷹の姿になって浴室から飛び出してきた。 そして()の姿のまままるまる二日間、鷹小屋から一切出てこようとしなかったのだ。 あの時、昴がキチンと教えてあげれば良かったのだが…人と関わって来なかった昴にとって、たとえ相手が亜鷹とわかっていても誰かと一緒に入浴するなんて考えられなかった。 いや、多分むしろ相手が亜鷹だからだ。 好きな人と一つ屋根の下で暮らすというだけでもいちいちドキドキしているというのに、一緒に風呂に入るなんて昴にとってはハードルが高すぎる。 「なぁ、亜鷹。どうしたら克服できる?」 これから一緒に生活していこうと決めた以上、また亜鷹が鷹小屋に引き篭もりまるまる二日間も一人にされるのは嫌だった。 数週間前まで一人でいることが当たり前だったのに、いつの間にか亜鷹に依存している。 自分がこんなにもさみしがり屋だとは思ってもみなかった。 「さぁな、身体が濡れなきゃ入る」 支離滅裂な事を言う亜鷹に昴はため息を吐く。 「も〜〜、無茶言わないで」 「あ〜〜でも…」 亜鷹は突然何か思い立ったように昴を見つめた。 「何?」 昴も見上げると、真顔でじっと見つめていた亜鷹の口元がニヤリと歪む。 なんだか嫌な予感がした。 「昴と一緒なら入れるかも」 「絶対絶対目開けるなよ」 狭い浴室で裸になった昴は、同じく裸になりバスチェアに座る亜鷹に念をおしていた。 「わかってるって」 亜鷹は昴の言いつけ通り、大人しく目をつぶっている。 亜鷹の要望通り一緒に入る事をのんだ昴だったが、やはり恥ずかしくてたまらなかった。 亜鷹の裸はもう何度も見ているし、昴自身も何度も見られている。 肌を晒す以上の事だってしているというのに、なぜか風呂場という場所は別物に感じて仕方がない。 とりあえず亜鷹の視界を塞ぐ事で何とか羞恥を紛らわせているのだ。 「なぁ昴、なんで目開けたらダメなんだよ」 「…っ、そ、それは…目に、あ、泡が入ったら痛いからに…決まってる」 「ふ〜ん…」 腑に落ちない返事をするものの、亜鷹は目を開けようとせず少しホッとする。 何だか騙しているような気がして罪悪感が生まれたが、羞恥心には勝てなかった。

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