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10《群を守りたい》
「決闘になれば、傷つく獣人も出てくるんだろ?」
「あぁ、」
「オレたちが来なければ必要なかった決闘、それで血が流れるのは…やっぱり」
「アサト、」
「ありがとうラウ、でももう少し、この群 を残せる方法がないか考えてみるから」
「アサトは優しい」
そう頬を舐める。
「ふふ、ラウには負けるよ」
「なぜ、そこまで群 を思ってくれる?」
「無くしたくないんだ、この群 を、ラウのきもちを…」
「どういうことだ?」
「ここは、オレたちみたいに、勇気を出して森に逃げてきた人間Ωたちの最後の砦だから…」
森は恐ろしい場所…
けれど、人間の世界はもっと恐ろしい。
「ラウに助けてもらわなければオレたちはあのまま夜には野獣に喰われて死んでた」
ラウに見つけてもらえて本当に良かった。
迷った人間を助けようとラウがしてくれたから…オレたちは生き残れたんだ。
「……」
「人間の世界だと、Ωがツガイになって繁殖すること自体許されなくなっているから、もしラウみたいに人間と共存を考えてくれる獣人の群 がいてくれたら、逃れてきた人間のΩやシィみたいな半獣人も安心して暮らしていけるかなって」
「そうだな」
「それと、純粋にラウの継いだ群 を守りたいって思いもあるんだ、ラウがレイとも群 のみんなとも離れなくて済むように」
「ありがとう、俺からもレイに言い聞かせておこうか?」
「それは、今は待って」
「なぜ?」
「ラウがオレたちを贔屓 するとレイを余計逆撫でしてしまうかもしれない、今はまだオレの話を聞いてくれているから、オレが直接説得してみるよ」
「あぁ、無理はするなよ」
「うん、行き詰まったら頼るから」
「本当にアサトはしっかりしている」
「一応、今までαとして育てられていたから、人間のαは人の上に立って先導していかなきゃならない、半端じゃダメなんだ」
「そうか…人間の世界は厳しいな」
「今となっては、このプライドは邪魔なだけかも知れないけど…」
「いや、頑張っているアサトは尊敬できる、ただ俺には甘えていい、頼ってくれたらいい、俺はアサトの一番の理解者でいたい、これからも味方でいるから」
「うん、ありがとうラウ」
優しいラウに抱きつき、ふさふさの胸元に顔を埋めてラウの匂いに安堵する。
「アサト」
その身体を爪で傷つけないようにそっと抱き寄せる。
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