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53《森で生きる》

毎日変わらず、森の朝が来る。 毎日ラウに愛され、ラウのそばで眠り、ラウのそばで目覚める。 ツガイになったあとも、ラウはずっと優しくて… 不安に思うこともあるけれど、その優しさに救われている。 今日も三人で朝食を済まし、ラウたちと狩に出る。 Ωは基本狩には出ずに、村に残って食料管理や調理、栽培やその他の作業を手伝うのが普通なのだが、オレとシィは人間の知識と技術を使った罠での狩の方法などを教えた甲斐もあって、狩に同行が許されている。 まあ半ばオレのワガママだけど… 連れて行ってくれないなら単独で近場を狩に行くって言ったらラウに反対されて、オレたちを住処に残して勝手に狩に行ってしまわないかと心配したラウが同行を許してくれた。 ただ、獣人の狩は瞬発力が凄い、獲物を発見したら、追い込み役と待ち伏せ役に分かれて、遠吠えと声でコミュニケーションを取りながら、素早く狩が行われる。 だいたい人間の足では追いつけない。 シィは意外と素早くて、獣人に追いつけるほど四足で駆けることができたりするけど、仲間に加われるほどではない。 足手纏いにはなりたくないから、ラウの邪魔にならないように、猪や鹿など大物の狩をまだ行わない若い獣人の中に入り、魚獲り組に混ざったり、木の実の採取役をしたりして、出来ることを手伝っている。 シィも獣人の輪の中に入って欲しいけれど、いつもオレの後ろへ隠れて、輪に加わろうとはしない。 時間はかかっても、気の合う獣人がシィにも出来ることを願いつつ、無理強いはせずに、日々過ごしている。 ラウの遠吠えで一日の狩は終わり、水場で水浴びをしたり整容して、食事場で夕食。 内職などしながらシィを寝かしつけて、ラウと二人の時間になる。 毎日変わらず森での一日が終わっていく。 ラウと毎晩話していても、不思議と話題は尽きない。 森には機械的なものは何もないから、自ずと会話能力は上がる。 群のこと、二人のこれからのことや、シィのこと、仔どものこと。他にも色々…ラウは不安を寄り添いながら優しく聞いてくれる。

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