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第1話

「ふぁーっ、やっと部屋の片づけ終わった!。・・もう引っ越しなんかしたくねえ・・な」  大学受験が終わった直後から、ネットや実際に店舗に行って見て吟味したこだわりの家具が並ぶ2Kの部屋を見回しながら財前直央は大きく伸びをする。  ずっと憧れていた一人暮らし。入学予定の大学に近い築5年7階建てマンション3階のこの部屋に最初に案内された時には「ここでオレの夢を叶えるんだ!」と心の中で叫んだ・・のだけれど。 「せっかく親を説得して・・半分はオーナーさんのおかげだけど」  息子がネットで探してきた部屋の家賃の高さに、親は最初はいい顔をしなかった。が、直央はある夢のためにどうしてもオシャレに感じる部屋に住みたかった。6畳一間のアパートなんてとんでもないと。 「まあ、親に言えるはずもないけど、さ」  恋人とイチャイチャしたいから・・なんて、と。 「ウチの親があそこまでイケメン好きだとは思わなかったけどさ。でも、ほんとあのオーナーさんのおかげだよな、部屋が決まったのは」  渋る母親をともかくもと不動産屋に連れて行き、その案内でマンションまで来て、そして“彼”に出会った。 『こちら、このマンションのオーナーの高木さん。この近所に住んでいらっしゃるんですけど、時々はこちらの様子を見にいらしてて・・。今日会えてよかったですねえ』 ⦅えっ?⦆ 『あ、あら・・お若いオーナーさんですのねえ。(い、イケメン!)』 『か、母さん!』 ⦅でも・・本当にかっこいい・・⦆ 『はは、彼を見ると大抵の方がそうおっしゃるんですけど、これでも30半ばなんですよ、彼』 『えっ!』 『あら、そうなんですか。でもお若い・・い、いえ!』 『母さんたら・ ・』 『・・祖父の遺産を相続した建物なので。ちょっとした在宅仕事をやっているので、ちょくちょくはこちらに様子を見に来ることもできます。・・それでも、お母さんがご心配なさる気持ちはご理解できま・・』 『いえいえ!』 「って、その場で印鑑出しちゃうんだもんなあ。イケメンパワーすげえっていうか・・。なんつうか、綺麗な茶髪だったよな、染めてる感じじゃなくて。ハーフ、なのかなあ」 『ん?・・僕の顔に何かついていますか、そんなにじっと見て』 『い、いえ!』 ⦅お、オレは何を・・⦆ 『そうよ直央、失礼でしょ!すいませんねえ、この子は父親がいないもので年上の男性に・・なんていうか憧れがあるようなので。あ、家賃の お支払いのことでしたら大丈夫ですわ。一応、私も世間には少しは名の知れ・・』 『母さん!・・言ったでしょ、オレもバイトするんだからって。母さんは自分の仕事に専念してくれればいいの!』 ⦅も、もう!この人の前で恥ずかしいこと言わないでよ。母さんが苦労したのはわかってるんだけど・・⦆      自分はそう思って顔を赤くしたり青くしたのに・・目の前のこの男性は笑って・・ 『イラストレーターの財前灯さんでしょう。僕ファンなんですよ。あ、僕の名前は高木琉翔っていいます。こんなとこで、本物の“灯さん”に会えるなんて光栄です。・・息子さんを僕にまかせていただけますか?』 「・・なんてことを言うんだもんな。で、母さんも即答で『はい!』って。恥ずかしいったらありゃしねえ。まあ、ホッとはしたけど。つか、あの言動はどう考えてもホストのソレだよな。どう見たって20代の容姿だし。だいたい、“営業用”じゃない母さんを見てすぐに財前灯ってわかるのが凄いって」  身長はおそらく190㎝はあっただろう。大きい瞳に長めの睫毛、肩までの髪。そして絶やさない笑み。一見、女性的にも見える容姿。そして優し気なその声音。妙な色気も感じるのだが、女性っぽいというわけではなく 「透明感のある爽やかな声・・っての ?」  あの声で耳元で囁かれたら自分は・・。 「絶対“勃っちゃう”って!・・って失恋したばっかなのになのに、何言ってんだろオレ」  生活用品の揃った部屋を見渡す。全ては揃った。けれど、一番自分の欲しかったものは、自分の望む形でここに来ることはないだろうと直央は肩を落とす。 「オレが受験勉強やってる間に、何で彼氏作ってんだよぉ!いくら推薦決めてたからってさあ。・・どうせ、“オトコ”を好きになんならオレでよかったじゃん・・。てか、オレしかそんな相手になるはず・・なかったのに」  幼馴染の加納千里に恋してもう何年になるのか。 「ちょっとでも離れるんじゃなかったんだよ!あんなにオレを頼りにしてくれた千里が・・なんで・・なんで!他の男に抱かれんだよ!アイツを最初に抱くのはオレだったはずだったのに・・」  本棚の上に置いたフォトフレームを見つめる。中学の制服を着た二人の“男子”。約3年ぶりに地元に戻ってきて、彼に再会して自分の想いを再確認して。 「大学に入ったら一人暮らしして、ちゃんと千里に告白もして。そしてこの部屋で・・って思ってたのにぃ」  千里から『彼氏ができた』とLINEがきたときには、夜にも関わらず絶叫した。 「何なんだよ、一か月の間に何があったんだよ。他校生じゃん!しかも年下じゃん!オレの千里があんな・・身体がデカいだけの高校生に取られてしまうなんて。そりゃあ確かに顔は・・ちょっとは・・いいけどさ。でも性格は最低だ!」  スマートフォンをとりだして、LINEの画面を見る。千里から送られたその画像を直央は消せずにいた。はにかんだ顔の二人の男性のツーショット画像。“二人の距離”は自分のソレとそんなに違わないように見えるのに、こっちは“ただの幼馴染”、向こうは“恋人”。 「だいたい、二人が知り合ったきっかけが“オレ”ってなんなんだよ。それでオレが失恋するとか、まるきっりピエロじゃん。なんのために、この部屋を借りたのか・・」  いくらオーナーがイケメンだからって、あの時の自分が心を動かす・・はずは無かった。千里に恋していたのだから。そして、その想いは今でも変わらない。 「千里は何も知らないから。オレの想いも、オレがアイツの恋人と・・それから“その親友”を憎んでいるのも」  千里が、現在の彼氏・・佐伯亘祐と知り合うためには、自分と亘祐の親友との諍いが必要だった。 「だからって二人ともノンケのはずなのに、何でそんなに簡単につきあっちゃうんだよ。オレは、ずっとガマンして・・。でも、大学生になったらちゃんと告白しようと思ってたのに。オレの性癖もなんもかんも」 『この子は父親がいないもので年上の男性に・・なんていうか憧れがあるようなので』 「違うもの。憧れなんかじゃなくて。それに年上だけじゃないもの。オレは・・・オトコが好きだから」  物心ついたときから自分には父親がいなかった。離別なのか死別なのかはわからないし、なぜか調べる気にもなれなかった。当時から有名なイラストレーターだった母親の周りには、いわゆる業界人的なオトナたちがひしめいていて、直央のことも可愛がってくれた。それで十分だと思っていた。が、小学5年生の時にあるパーティーでの千里との出会いが、少し自分を変えた。  それまでの直央は男性の手で髪を触られるのが好きだった。そしてぎゅっと抱きしめてもらうことを望んだ。時々子供モデルをしていたほどに直央の容姿は可愛らしいと称されるものだった。平均より少し低い身長ではあったが、大きい瞳と(その頃は)素直で物怖じしない性格が大人たちの興味をひいた。  母親が目を光らせていなければ、ある種のオトコたちの餌食に間違いなくなっていたほどに。 「千里はオレより年上なのに、オレより線が細くて儚げで・・。オレが守ってやらなきゃ思ったんだ。だから、身体も自分なりに鍛えて・・いつかオレが千里を抱きしめてやれるように」  その思いが恋なのだと気づいたのは中学に入ってから。千里に近づくものが男だろうと女だろうと目障りでしょうがなかった。自分にもアプローチしてくる人間はいたのに全く気が付かないほどに、千里だけを見てそして執着した。当の千里はそれを“友情”だと思っていたのだが。 「それでもよかったんだ。カミングアウトする勇気はまだ無かったから。もっと自分を磨いてからだって思ってたから。なのに・・」  母親のアメリカ移住のことさえなければ、自分の計画通りにいっていたはずなのにと直央は唇を噛みしめる。まだ中学生の彼を日本に置いていくはずもなく、母親に引きずられるようにアメリカに旅立った。そして18歳になったとき母が再び日本に戻ることになり千里と再会した直後にある事件が起こり、けれど受験勉強に没頭するしかなかった直央は、その間に千里と亘祐の距離がぐんと縮まることなど考えもせずに、未来の楽しい生活を思い描いていた。そして、部屋も決まったころ、あのLINEがきた。 「女子ともつきあったことないって言ってたのに、オトコに恋するなんてさ。こんなんだったら、再会したときに告っとけばよかった・・。オレの方が付き合いが長いのに。でも・・もうヤッちゃんだろうなあ。オレの知らない千里のあれやこれやを佐伯のヤツは知ってる・・んだ」  自然に涙がこぼれる。 「結局・・オレは一人じゃんか。だからアメリカになんか行きたくなかったんだ。あっちでも嫌な思いはしたし」  気がつくと、窓の外は暗くなっていた。季節は春で、夕方暗くなるのはけっこうな時間になってから。 「・・どうすっかな、夕飯。さすがに腹減ってきたけど、冷蔵庫の中はからっぽだし」  考えた末、近くにスーパーがあったことを思い出し、そこに買い物に行くことにした。なるべく自炊することが母親との約束でもあったから。 「まあ、こんな気分の時に他人と飯食いたくないしな。ネットも繋がってるから動画でも見ながら・・って、あそこにいるのって、もしかしてアイツ・・」  思わず物陰に隠れてしまう。 (な、なんで。オレが別に悪いことしてるわけじゃないじゃん。だいたい、オレの方が年上・・) 「亘祐ってさ、最近食欲が旺盛になってきたんじゃないか。まだデカくなりたいわけ?」 「えーっ、そんなことないってば。あ、でも」 「なんだよ」 「千里が作ってくれるご飯は美味しいからいっぱい食べちゃうな。もちろん、その分運動もいっぱいするけどさ。じゃないと太っちゃう」  幸せいっぱいという顔の親友を見て、日向哲人は複雑そうな表情になる。 「・・運動って、まさかセックスのこと言ってんの?」 「!・・な、なにを・・。こ、こんなとこでそんな話すんなよ!」  哲人から出た思いがけない言葉に、亘祐は慌てて相手の口を押える。 「ふが・・らってそう・・ふぁふぁせよひぃふぃふぁげん」 「あ、ごめん!・・だってぇ」  赤い顔のまま、亘祐は手を離す。が、口をとがらせて 「は、恥ずかしい・・じゃんか。つうか、哲人の口からそんな言葉が出るって意外だよ」 「・・オレって、そんな固いオトコに見える?」  不機嫌な表情を崩さないまま、哲人は親友に問う。 「少なくとも、オレが千里と仲良くなっていくのを喜んではくれなかったのはわかってたよ。でも、あっちは純粋にオマエとも仲良くしたがってんだ。オレの親友だからって。本当にいい人・・つうか」  亘祐の顔がさらに赤くなる。 「・・」 「可愛い人なんだよ、あの人は。年上の男性だなんて思えないほどに。大切に・・したいと思う存在なんだ」 「!・・んだよ、ぬけぬけと。嫌味か!オレへの」  亘祐の言葉を聞いて、直央はぐぬぬと拳を握る。 「オレだって、千里をずっと大切に思っていたんだ。だいたい・・千里とせ、セックスってオレにことわりもなく・・つうかオレの前でそんなことを・・」 「しょうがないでしょうが。財前さんがせっかく隠れているんだから、気づかないふりしてあげようと思っていたのに。そんなに寂しかったんですか、大きな声で恥ずかしい単語言って。大学生になるのに節操がないんですね」 「て、哲人!」  思いがけず近い距離から声が聞こえて驚く。 「へ?なんで、オマエらが・・。ば、バレてたのか!オレが聞いてたの・・」 「何言ってるんですか」 と、哲人が呆れたように言う。 「アナタの気配なんぞ、オレらにわからないはずがないでしょうが。オレは中学まで、亘祐は最近まで武道やってて二人とも段持ちですからね。・・最初に、アナタを助けて“あげた”のはオレだってこと忘れたんですか?」  わざと“あげた”のところに力をこめる哲人の意図に気づき、直央は怒りの表情になる。 「あ、あれは!不意打ちだったから!お、オレだってその気になれば・・」 「ならなかったから、加納さんは亘祐を選んだんでしょう?」 「は?それとこれとは話が違うだろうが!」 「同じことですよ」 と、哲人は肩をすくめる。 「恋愛に身長や年齢は関係ない。包容力なんて、態度や言葉でどうにでもカバーできるものです。・・その時に必要な行動をとれたものが勝ちなんですよ」 「!」 「アナタは、最初の行動から間違ってたんですよ。だから、オレや亘祐に関わってしまって、そして大事なものを無くした」 「だ、だからって!だからって・・」  諦められるはずもないと思った。そんな簡単に消えるものじゃないから、初恋のその想いは。 「オレと亘祐の会話聞いてたんでしょう。・・加納さんは本当に亘祐を想っていてくれるんです。ちょっかいかけないでください」 「・・オマエこそ、納得してねえんだろ。親友がオトコと付き合うなんて。だって、言ってたじゃねえか。 『何サムイこと言ってんですか。オトコがオトコを好きになるなんて・・その素肌に触れたいと思うなんて・・オレは嫌ですよ』 「いい子ぶってんじゃねえよ!だいたい、オマエの理屈だとオマエの行動だって間違ってんじゃねえか。だって、そうだろ。あのとき、オレを助けなきゃ千里と佐伯が知り合うこともなかったんだぜ?」 「・・人の“正しい想い”を消す権利は他人には無いと思っていますから。納得はしていませんけどね」 「な、なら・・」 「言っときますが、加納さんも亘祐もノーマルです。もちろんオレもね。でも、財前さんはそうじゃないんでしょう?・・そこらへんを考えて行動してくださいね」 「っ!」 「な、なんだよ。日向のやつ、本当は千里と佐伯の仲を壊したいくせに。理解してるフリして、オレばっかディスってんじゃねえっての。年下のくせに言いたい放題いいやがって」 『恋愛に身長や年齢は関係ない。包容力なんて、態度や言葉でどうにでもカバーできるものです。・・その時に必要な行動をとれたものが勝ちなんですよ』 「わかってんだよ、んなことは。でも、諦められないのも恋愛だろ。本当に・・好きだったんだから。千里に出会ってからは、千里だけだったんだ。触れて、触れたいと思ったのは。他の人じゃダメなんだもの・・」 「ふーん、でもオレはニーチャンに触りたいなあ。こんだけ可愛い顔をしてるから、ちょっと男っぽい女の子かと思ったら、声を聞いたらちょっと怪しいけど男の子みたいだから、声をかけてみたんだよねえ」  突然、見知らぬ男に声をかけられ直央は驚く。 「なっ!・・何を言って・・」 「あっ、たぶんオレはキミの好きな分類に入るの。さっきの男二人組のとの会話もちらっと聞いちゃったんだよね。そしたら話しかけたくなっちゃってさ」  ぱっと見は普通に見える男だ。ニヤケているわけでもない。真面目そうな風貌にも感じられる。が、直央の好みではない。というか、先ほどまで話していた亘祐や哲人が普通に出会えば直央が絶対にときめくほどのイケメンだったせいもあり、この男がそこらへんのどうでもいい石ころ以下にしか見えない。 「オレ、これから晩御飯作るんで・・」 「えっ?一人じゃないの?・・て、その量はどう考えても一人分だよね。オレ奢るからさ、どっか食べにいかない?そんでその後はさ・・」 「お断りします。つうか、ぶっちゃけ好みじゃないもんで」  いいかげんうんざりして、はっきりそう言い放つ。すると、相手の表情が変わった。 「あんたさあ、本命の彼にフラれたんだろ。で、身体が疼いてんだろうがよ。とりあえずは、オレの相手をしてみてもいいんじゃねえの」 「・・安売りはする気はねえよ。大事にしてきた身体だからな」  ただ一人のために。大好きな相手と結ばれるために。 「つうか、下手なナンパしてんじゃねえよ!」  そう言いながら自宅マンションに向かって、直央は走り出す。が、石に躓いて転んでしまう。 「っ!・・いってえ」 「そんなに、嫌わなくたっていいだろ?けっこうテクには自信あんだぜ。アンタみたいなオトコならオレもヤル気が・・っ!」 「どうして、アナタという人は。・・何度もオレの手を煩わせないでいただけますか?オレは、アンタが嫌いなんですから」 「!・・なんで・・日向・・ここに・・イタッ!」 「そんな小さい小石にけつまづいてバカですか、アナタ。もう少し、身体を鍛えた方がいいですよ」  そう言いながら、哲人は右手に持っていたナンパ男の襟を外す。乱暴に投げ捨てるというオプションをつけて。 「言っときますが、オレはアナタを助けるためにここを通ったわけじゃないんです。たまたまなのですけど・・まあ不快なこの男が目についたのでね。・・後は自分で処理してもらえますか」 「な・・ちょ・・待って。い、痛くてけっこう・・無理」  情けないと思いつつも、膝に滲む血は痛さと比例している気がする。 「・・しょうがないですね。おい!」  哲人の声のトーンが変わる。亘祐と話していたときとは少し違う声。低くて、迫力があるがどこか・・妖しいボイス。 (へっ、な・・に。ぞくっときて、そして・・や、こんなの・・)  こんな時なのに、不用意にもときめいてしまう。 「少し・・いやだいぶ身の程をわきまえた方がいいぜ、おっさんよォ。無事でいたいんならな」 「ひっ!・・なんなんだよ、さっきの会話はなんだったんだよ」  男が痛さに顔を歪めながらも、抵抗しようとする」 「うっせえての。“レイラ”・・わかんだろ?この辺りでゲイでいるんならこの名前をオレが出す意味が」 「!・・なっ、そ・・くそっ!」  顔色を変えた男が逃げていく。それを唾を吐きながら見送った哲人が、倒れたままの直央に手を差し出す。 「早く立ってくださいよ。立てないほどのケガじゃないでしょ」 「オマエ・・さっきと言葉遣いが全然違うじゃねえか。てか、レイラってなんだよ」 「・・助けてもらって、その態度はなんなんですか?だいたい、なんでアナタがこんなとこに・・」 「や、だってココはオレの住むマンションの近く・・」 「!・・マジですか。・・まあ、いいです。オレは全く好みじゃありませんが、アナタはオトコに狙われやすい顔のようですね。最初に会った時もそうでしたし。せいぜい気を付けてくださよ。オトコなら誰でもいいわけじゃないんでしょ」 「なっ、なんでアイツにそんなことまで言われなきゃいけねえんだっつうの。だいたい・・同じマンションだなんて。何で高校生が一人暮らししてんだ?そんで、オレのケガの手当までしてくれんだよ。・・もう、わけわかんねえよ!オレのこと嫌いなんだろうが、アイツは」 『まさかあなたがココに住んでいるとはね。・・これ以上、オレに迷惑かけないでくださいよ』 「知るか!ちょっと強くて顔がいいからって、年下のくせに生意気なんだよ。そりゃあ、助けてくらたことには感謝してるし、ちょっとは・・かっこいいと思っちゃったけど。特に、あの声が」  高校生とは思えないほどに低く凄みのある声。が、決してオジサンくさいわけじゃなく、なんていうか頼りがいのある心地よい声。 「なんで普段からああいう声で喋んないんだろ。あの声で口説かれたらオレなら絶対・・」 と考えたところで、ふと我に返る。 「あ、あいつはそういう対象じゃねえんだ!だいたい、向こうがオトコ同士の恋愛を毛嫌いしてんだし。でも・・」  自分を助けてくれたときの態度と声が脳裏から離れない。手が自然に、自分の下半身に向かう。 「っ!・・や、だって・・素敵だ・・って・・はあっ」  推定190㎝の長身とあの声で攻めたてられたら・・ 「ちが・・う。オレが千里を・・抱くはずだった・・のに・・あっ」  残った片方の手が身体の後ろに伸びる。攻め志望だったため、普段のオナニーでは乳首と性器しか触らないのだが、今夜はなぜか尻の方に意識がいく。 「や、挿れ・・あ、かきまわされ・・た・・ん・・ん」  あの身体なら、彼のソレはたぶん・・と想像してしまう。ソレを挿れられたなら自分はどうなってしまうのだろうと。 「やあ・・あっ、あっ・・イイ・・ああ」    意識が快楽に堕ちていく。 「ちが・・う。嫌・・い・・なの」     To Be Continued

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