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僕達の楽しみの前に
「ただいま!」
「お邪魔しまーす!!」
僕のただいまの声の後にけいの大きな声が続いた。
その声に反応して母さんがリビングからチラッと顔を出して「おかえり、実!慧君!」と笑顔でそう言った。
「ほら実!行くぞっ!」
「うん!始まっちゃうもんね!」
「こーらッ!待ちなさい」グイッ
「「ぐえ!」」
靴を脱ぎ捨て、テレビの前に向かおうとしたら、2人揃って首根っこ掴まれて変な声が出る。
「なんだよー!実のかあちゃん離せよー!」ジタバタ
「…ッ…母さん離してよ」ジタバタ
逃げ出そうとジタバタもがいてみたが駄目みたいだ。
僕は諦めたが慧の方は諦める気がないらしく、ジタバタと抵抗し続けていた。
「はーーなーーーせーーー!!!」ジタバタ
「はーなーしーまーせーん!」
逃げる事に必死な慧。母さんはそんな諦めが悪い慧を見て意地悪な表情している。
そんな母さんを見てしまった僕は慧に焦りながら「慧!あ、諦めた方がいいよッ!」と声を掛けた。
「いーやーだー!
俺はテレビ見るんだー!」ジタバタ
僕の声掛けも虚しく、慧はまだ抵抗し続けている。
そんな慧の姿を見て母さんは意地悪な笑みをもっと深くした。
(…あ、此れは駄目だ。慧が危ない…)
意地悪な表情をしている時の母さんは危ないのだ。
きっといつもの「アレ」をしてくるに違いない。
「…慧!やっぱやめたほ…!…」
慧を助けようと声を掛けようと思った矢先、母さんと目が合った。「声を掛けちゃダーメ」と言ってるかの様な表情をしてたので、声掛けを諦める。
(これで声掛けようとしたら僕も母さんに「アレ」されちゃう…慧、ごめんね…助けられなくて…)
心の中でだけど慧に謝っておいた。
声掛けを辞めた僕を見て母さんは「フフッ」と上機嫌に笑いながらも慧の首根っこを離さないまま僕の方に近付いてきて、頭を撫でてきた。
2回ぐらいナデナデした後、慧の方を向いて
「慧君?覚悟はいいかなー?」
ってすっごいニッコリ顔でそう母さんは言い放った。
「…ヒッ!…ッ実!!俺を助けろッ!!」
その笑顔を見てやっと慧が何されるか気付いたらしく、僕の方を見て助けを求めてきたが、無視をするしか無かった。
「あ!!実!!お前酷いぞ!?」
「うーふふふふ…慧君、実はちゃーんと理解出来るいい子だから「アレ」されずにすむのよー?」
「…ヒッ!!!」
(慧、頑張ってね…)
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