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慧と僕

「なーに泣いてるんだよ!」 立ち止まってグスグス泣いてた僕を怒鳴る声がする。 (この声は…ッ!) 「え!?なんで此処にいるの?」 泣き腫らした顔のまま、顔を上げれば其処には怒り顔の声の主、慧がいて…。 「…ったく泣き虫慧! ほらっ!手ー出せよ!((グイッ))」 「…え!!慧!? …わっわわ!待って!!//」 「待てるかっ!」 ダッダッダッダッダ… 驚いてポケーっとし続ける俺の手をグイッと引っ張ったと思えば、キツく手を握られる。恋人繋ぎの状態のまま、慧は走り出し始めた。 「はぁ…はぁ…慧ッ…なんで戻ってきたの?」 「…………」 俺の質問の返答などせず、走り続ける慧。 慧の足が早く、付いていけてない僕の足が偶に転びそうになるが、キツく結ばれた手のお陰でなんとか転けずに済んでいた。 「…はぁ…はぁ!…」 「…はぁ…ん…はぁ…」 慧に手を握られたまま家まで走り続けた数分間、僕はずっと不思議な思いを感じ続けてた。 (…何故か知らないけど『慧が僕の近くに居るだけで何でも出来る気がした』んだ。慧が戻ってきてくれて、僕の手を繋いでくれた瞬間、不思議な事に今迄痛かった横腹も、何故か辛かった心臓も、『もう走れない!』って思ってた足も大丈夫になったんだから) …あと慧に握られた手から感じる、慧の暖かさが凄く心地よくて、ずっと握っていたいなって思ってしまったのは内緒だ。

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