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第0話 プロローグ

 初めて二人に出会ったのは、まだ春樹(ハルキ)がΩだと分からない頃で、二人が上流階級であるαだと言う事も全く分からない頃だった。  幼少期に父親の転勤により、のどかな田舎から都会に引っ越す事になった春樹は、引っ越し先に不安があった。けれど、隣の豪邸に住む二つ上の明弘(アキヒロ)と、同い年の桃矢(トウヤ)と出会い、その不安は全て消えた。  二つ上の明弘は優しくて、春樹の事を自身の弟よりも可愛がってくれた。とは対照的に、桃矢は春樹に冷たく、いつも馬鹿にされては泣かされた。  そんな春樹をいつも庇ってくれたのは明弘で、春樹を泣かす桃矢をいつも窘めてくれたのだった。  二つ上のお兄ちゃん。それが、今まで明弘に抱いていた感情だった。でも、春樹が中学一年の夏。突然、明弘にキスをされ、春樹はいつしか明弘の事が誰よりも一番だと思うようになった。  誰かの特別。それが、春樹にはとても嬉しかったのだ。  そして、キスだけの清い交際が始まり、唇と唇が合わさるだけでドキドキしてしまう春樹。でも、その間はずっと桃矢の顔がチラついた。  中学二年の春の事だ。自分がΩだと知った。  βの両親が落ち込む中、春樹だけは自分がΩだと知り、αである明弘と番になれると思って喜んだ。  けれど、そんな春樹に桃矢が言う。 「お前、馬鹿なの?」  いつもみたいな小馬鹿にした顔。その顔が今でもずっと頭から離れない。  その時の春樹はその意味が全く分からなかった。いつもと同じ、春樹を馬鹿にしてるのだと思った。  αとΩ。それがどれだけ違うのか。高校生になって、春樹はようやく分かったのだった。

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