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第31話*
(ああ、この感覚……)
月明かりだけの隠れ家では、視覚はあまり役に立たない。それでも由羅は確かに見ていた。彼の愛情を感じる度に、世界が鮮やかに光り輝くのを。全身が幸せな快感で満たされていくのと同じように、枯死した感性が瑞々しく息を吹き返していくのを。
「……由羅」
ドクン、とライアルが脈打った。気配を察し、由羅は彼を見上げた。
「なあ、中に出していいか……?」
「え、ああ……でも子は期待できないと……」
「まだできなくなったと決まったわけじゃない」
ライアルがきっぱりと言う。
「子というのはもともと授かりものだ。できるかできないかは誰にもわからない。でも、もしかしたらできるかもしれない。俺とお前なら……」
「ライアル……」
「俺たちの子、授かるといいな」
「あっ……」
細腰を掴まれ、ぐっと一番奥まで楔を打ち込まれる。直腸の奥に潜んでいる子宮が縮こまり、ライアルの精を今か今かと待ち望んでいた。
「んっ……」
軽やかな浮遊感があった。身体が細かく震え、由羅は愛しい男にしがみついた。体内でライアルの熱が弾け、腹の奥に送り込まれていく。
「……ああ、そう言えば最後の仕事が残ってた」
ライアルが由羅の首筋に顔を近づけ、項 に歯を立てた。彼の鋭い犬歯が白い皮膚を食い破った。その刺激のおかげで、また世界が色濃く輝いた。
噛みついた痕をぺろりと舐め、満足げに彼が言う。
「これでお前は、名実共に俺の番 だ。これからもずっとずっと一緒にいような……」
「……はい、旦那様」
由羅は両腕を伸ばし、しっかりと彼を抱き締めた。
由羅は幸せだ。ライアルと出会って、初めてこんな幸せがあることを知った。世界がこんなに優しく温かいものだということを。
(ここが私の世界……)
由羅が手に入れた永遠の理想郷 である。
【終わり】
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