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「夜中だけで良いから、この部屋から出たいんだ」
ヒヨリのお願いというのは至極真っ当な内容だった。確かにこんなところにずっと居たら息も詰まるだろう。案外体が細くなっているのも、少なからずストレスがかかっているのかもしれない。
「ダメ?」
断る理由がない。ナギに知られたら面倒臭いことになるだろうから、条件をつけて受け入れることにした。
「分かった。その代わり約束しろ」
「うん、何?」
「部屋から出るのは俺がいる時だけ。動くのも俺の目の届く範囲内でだ」
「そんなの全然平気だよ!アドルフさんと散歩出来るなら逆に嬉しい!」
「散歩じゃない」
「今夜は?俺、久しぶりに庭に行きたい!」
「ああ、構わない」
「やった!」
ベッドの上で体を弾ませるヒヨリが随分と無邪気に見えた。
***
その晩の夜が深くなった頃、皆んなが寝静まってからヒヨリの所へ行った。
部屋を開けるなり、首を長くして待っていたらしいヒヨリが服をちゃんと着て体をうずうずさせながら座っていた。
「やっと来た!アドルフさん、行こう」
「お前…静かに出来るのか?興奮して暴れてくれるなよ」
「任せて!」
そう言って立ち上がったヒヨリは、思っていたよりもフラついた足取りで歩き出した。
その様子に違和感を覚えたが、久々に歩くからだろうと結論づけると連なって部屋の外に出た。
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