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「……なあ。今度入ってくる一年で、超イケメンがいるらしいぞ」
そう言い出したのは、目の前でやや目を輝かせた友人だった。その友人はある一人の男子──大宮 忍 に話しかけていた。
「ふぅん……そうなんだ」
「反応薄っ。もっと反応しろよ忍くぅーん」
「いや、だって別に興味ないし……元々顔面偏差値高いじゃん、ここ」
「まあな?」
携帯を弄りながら素っ気なくそう返した。下を向いた忍の目は美しく透き通っており、髪は男子には珍しく少し動くだけで靡くほどさらさらしていて、艶やかな黒色だった。
忍が通うのは全寮制の男子高校。
他の学校に比べて顔面偏差値が高いこの学校でも、忍は一軍に入るほどの容姿の持ち主であった。
「それになんかわからないけどみんな金持ってるし。滅びろ」
「いや、怖っ。おまえはその性格なきゃ本当にいい男なのに……」
「地主の息子に言われたら尚更むかつくな」
「ごめんなさいっ」
そう、そしてこの高校は山奥にあるにも関わらず金持ちが多い。ごく一般家庭に生まれた忍にとって居心地が悪いとしか言い様がない。
この友人に誘われてこの高校に入るまで実態を知らなかったから、入学したての頃は本当にびくびくしながら生活していた。
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