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「もし俺のことを好きになったら、そのときは俺と正式につき合ってください」 「……え」 「忍先輩は、俺のことを好きにならなければいいんですよ。……まあ」 またもや言葉を切る。 片谷が言葉を切るとこちらまで緊張感が伝わってくる。 「それが出来たら、の話ですけど」 「……っ」 肩をそっと掴まれ、顔を急接近させられる。ふわっといい匂いがした。 目を逸らすことが出来なくて、じっと目を見つめていると片谷が微笑む。 「近くで見ても綺麗な顔ですね……益々欲しくなっちゃいます」 「な……っ」 更に顔が近づいた。鼻息がかかる距離まで近くなり、顔を背けようとしたらそっと手を添えられて逃げられなくされてしまう。 こんな光景、誰かに見つかったら危険なのに。 それに、離れられないほど添えられた手に力は入っていない。なのに、離れることが出来ないでいるのだ。 「……近いっ、です……」 「そういえば、聞いたんですけど……忍先輩、生徒会補佐なんですよね」 「そうですけど……」 この距離で会話しているのに、口臭がしない。大抵の人間は臭いはずなのにどうしてだろうか。

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