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「あ……もしかして、結構俺疑われてます?」 「結構じゃない。めっちゃ疑ってる」 「あはは……まあ、そうですよね。うーん、どう説明しようかな」 片谷が人差し指でくちびるを触った。なにかあるごとにくちびるを触るのは癖なのだろうか。 その所為か、真っ赤なくちびるに目が行ってしまう。かさかさしているわけでもなく、かといって分厚すぎるわけでもない。 「まず、俺は好きじゃない人にキスはしません」 「……どうだか……」 「嘘告白もしませんし、自分で言うのもあれですけど……一途です」 「口だけならなんとでも言えますけど」「……なんかもっと扱い酷くなってませんか?」 どうしよう。片谷が言うことが全て嘘に聞こえてしまう。 これはあれか。先入観というやつか。 栗色のネクタイを緩める。息苦しくなってしまった。 「嫉妬するのも……忍先輩が初めてです」 「嫉妬……てか、なにか勘違いしてないか? 君が好きなのはこの見た目なんだろ」 「……まあ」 「俺はこの見た目嫌いだよ。この見た目ってだけでなんでも出来るって思われる。好きでこう生まれてきたわけでもないのに、勝手に妬まれる。僻まれる」

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