29 / 131
[2]-13
「あ……もしかして、結構俺疑われてます?」
「結構じゃない。めっちゃ疑ってる」
「あはは……まあ、そうですよね。うーん、どう説明しようかな」
片谷が人差し指でくちびるを触った。なにかあるごとにくちびるを触るのは癖なのだろうか。
その所為か、真っ赤なくちびるに目が行ってしまう。かさかさしているわけでもなく、かといって分厚すぎるわけでもない。
「まず、俺は好きじゃない人にキスはしません」
「……どうだか……」
「嘘告白もしませんし、自分で言うのもあれですけど……一途です」
「口だけならなんとでも言えますけど」「……なんかもっと扱い酷くなってませんか?」
どうしよう。片谷が言うことが全て嘘に聞こえてしまう。
これはあれか。先入観というやつか。
栗色のネクタイを緩める。息苦しくなってしまった。
「嫉妬するのも……忍先輩が初めてです」
「嫉妬……てか、なにか勘違いしてないか? 君が好きなのはこの見た目なんだろ」
「……まあ」
「俺はこの見た目嫌いだよ。この見た目ってだけでなんでも出来るって思われる。好きでこう生まれてきたわけでもないのに、勝手に妬まれる。僻まれる」
ともだちにシェアしよう!