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何故か目の前で項垂れる友人を無視し、ご飯を口の中に入れる。
忍は少食のため、食べるスピードも遅い。
「……ここにいる生徒が、忍が童貞じゃないって聞いたら驚くだろうなあ。どんな美人を抱いたんだ! ってなる」
「そんなに気になるものなのか? 結構美人だったとは思うけどタイプではない」
「うわー……」
あのときはどうして抱いたのだろうか。しつこく迫られたりでもしたのだろうか。
自分でも思い出せない。黒歴史というのは自分の頭の中で自動的に抹消されているようだ。
「てか、今日って歓迎会じゃないか? やっぱ生徒会って裏で動く?」
「当たり前だろ。今回は一応風紀委員も手伝ってくれるけど主体になんのは生徒会だから」
そういえば、代表で歓迎の挨拶をしなければいけないのだった。
ああ、嫌なことを思い出してしまった。
「今年は何人の男子が忍に落ちるだろうな?」
「やめろ」
去年、高校一年生のときに忍はちょっとした有名人になった。
何故なら、当時誰も落とせなかったと言われる高校三年生の男子に全校生徒の前で告白されたからだ。
更にそれを断ったため色んな意味で話題になってしまったのである。
「去年のあの騒動があってからは忍の人気が右肩上がりでさあ。いやー、鼻が高かった」
「……君はいいよな。当事者じゃないんだから」
「傍観者でーす」
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