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固執。
なるほど。この人から見て俺はそう見えるのか。
「……それはまだ知らないでいいよ」
「は?」
「秘密」
まだ言うのは早い。
『あなたのことを好きになったのは俺が小六のときです。覚えてます? そのネックレスあげたの俺なんですよ』──なんて。
今言ったって無意味なだけだ。
だって今はまだ不安定で不確実で不明瞭だから。
いつかそれが安定して確実なものになって明瞭になるまでは。
まだ心の奥底に葬っておきたい。
そっと蓋をしていたい。
自分の中の──俺だけの、秘密にしておきたい。
「……で、これはどこに向かってんの?」
「んー……あ、もしかして今日生徒会ありました?」
「いや、平気。来週はあるけど……」
「なら大丈夫ですね。着くまでのお楽しみです」
そう言いながらウィンクをすると、明らかに忍の顔が歪む。少し不自然だっただろうか。
階段をゆっくりと降り、忍がちゃんと着いてきているか確認しながら歩いていく。
理想は手を繋ぎながら歩くことなのだが、今はまだしない。がっつきすぎてもいいことばかりではないのだ。
「……先輩」
「ん」
「俺、もう一年早く生まれてたら先輩と同い年でしたよね」
「……まぁな。てか、それは当たり前だろ」
「ははっ」
忍の当然すぎる突っ込みに、つい笑ってしまった。
そんな片谷が新鮮だったのか、忍が。
「……おまえも、そんな風に笑うんだな」
「へ」
真顔でそんなことを言われるものだから、つい素になってしまった。
そんな風に、とはどんな風に?
つい漏れてしまった笑いのこと?
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