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「んー、やっぱり美味しい。ここのアイスって最高」
「よく食べるんですか?」
「うん。出張来たら必ず食べてる。でも今日は奢りだったから。人のお金で食べるものほど美味しいものはないよなー」
その言い方がかわいくて、「ふふっ」と笑ってしまった。
今のは心から笑えた、というのに入るのだろうか。
なんというか、忍といると心が浄化されていく気がする。
心の中にあった蟠 りだとか、つっかえていたものだとか、そういうのが消えていくような。
「あー幸せー……」
忍がうっとりとした顔で、アイスを味わいながらそう呟いた。
「……ですね」
忍と同じ意味で幸せというわけではないが、種類は違えど自分も幸せな気持ちになる。
あ。
今だったらいけるかもしれない。
「先輩」
「ん?」
「アドレス交換しません?」
「あ、いーよ。待って、アイス食べてからでいい?」
「……っ、はい……」
よっしゃ。
ていうか、アイス食べてからでいい? って……かわいすぎる。
そんなにアイスが好きなのかと思うと、本当に心の底からかわいいと思ってしまう。
歓迎会のときは真面目な顔をして、生徒会補佐としてとても相応しい振る舞いをしていたのにその人が目の前でもこんなに気が緩んでいる。
心を許してくれている証拠だ。
もっと歩み寄って、近くなりたい。
「久しぶりに肩の力抜ける気がするな……」
「……?」
「あ、いや。ずっと背筋伸ばしてたりとか、こうやって学生らしいことしばらく出来てなかったなーって」
「学生らしい、って……」
学生らしい、の定義は恐らく放課後に友人同士で集まったり制服を着て勉強したりということだろうが、皆に注目されている状況で中々そういうことが出来なかったのか。
少しくらい、気を緩ませてもいい気がするのだが。
「だったら、俺つき合いますよ」
「えっ?」
「愚痴聞いたり、こうやって生徒が他にいない状況でゆったりしたり。俺が相手になります」
「……」
「仮だとしても、今は彼氏ですからね」
それも限定ですけど。
こんな言葉は飲み込む。
忍が、少しだけ嬉しそうな顔をしていたからだ。
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