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「……ゔー……ん」
あらかじめ設定しておいたアラームの時間より何十分も早く、メッセージの着信を告げる音が鳴り響いたことで目を覚ましてしまった。
折角の土曜日なのに、誰だ。
目を細めながら画面を確認すると、そこには昨日連絡先を追加したばかりの片谷からのメッセージが。
『先輩、起きてます?』
──……はえーよ。
既読してしまった以上無視するわけにもいかないので、中々力が入らない指で返信する。
『寝てた』
そう返すとすぐ既読がつき、返信がきた。
『出かけませんか?』
「……は?」
つい口からそう出てしまった。
出かけるって、もしかして今から? とうとう狂ったのか?
文字だけで会話するのが面倒で、ついアプリ内で電話をかけてしまった。
当然片谷はすぐに反応する。
『おはようございます』
「おはよ……じゃ、なくて。どうゆうこと? 出かけるって……」
『んー、デートしたいなぁって思って』
「っで……!?」
『俺もうすぐ準備終わるので。終わったら先輩の部屋の前まで行きますね。バスじゃなくて個人車借りれるので、それで行きましょう』
「はっ? え……もう決定事項なの!?」
電話が切れた。
どれだけ好き勝手なんだあの野郎は。
まあたまには街に繰り出すのも悪くはないか。
片谷相手に肩を張る必要もないし、少しハメを外すのもいいかもしれない。
すぐに気持ちを切り替えられるのは忍の長所だ。ベッドから起き上がり、トレーナーを脱いでいく。
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