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「うわーなに着よう……そんな私服ないんだけどな……」
ハンガーにかけられている服を物色する。大して外出する機会もないだろうと思い、そんなに実家から持ってこなかったのだ。
片谷の隣に立つのだからそれなりにきちんとした格好をした方がいいか。
白い七分丈のシャツに、ジーンズを吐く。学校ではつけない少しだけ洒落たベルトをつけ、姿見で自分の格好を確認してから頷き、アクセサリをつける。
ネックレスはどれをつけようかと迷っていると、片谷からメッセージの着信が。
『今先輩の部屋の近くにあるソファに座ってます。ゆっくりしてて平気ですからね』
無駄な気遣いだが、気を遣われるのは悪くない。
だが言葉に甘えてゆっくりしすぎてもあれなので少し急ぐ。
小六の男の子にもらったものをつけていつものように指輪をつける。
腕時計を左腕につけてからピアスを選ぶ。
服装がシンプルだから少し派手なものをつけようと思い、光に反応して輝くものを両耳につけ、もう一つの穴にも揺れるピアスをつけてから髪のセットにとりかかった。
適当にワックスを手のひらに馴染ませ、前髪を片方だけぐっと持ち上げて少しボリュームを出す。
いつもより少しだけ大人っぽくなったところでバッグに持ち物をつめ、紺色のロングベストを羽織り戸締りを確認したところで部屋から出た。
準備には二、三分といったところか。
きょろきょろ辺りを見渡し、ソファに座る片谷を見つけたので声をかけようとすると、それよりも早く片谷が忍に気づいた。
「先輩!」
「……ぁ」
そう言って立ち上がった片谷は黒いカーディガンを着ていて、ややくすんだ薄い水色のVネックと柄つきのパンツを着ていて、かなり男前になっていた。
髪型もいつもより洒落ていて、忍より大人に見える。
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