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第18話 愛を語らう時間
「こんな廊下で、続きをするのは恥ずかしいかも。キノコも見たいし、研究室にキノコを取りに行ってから仮眠室に戻ろうよ」
袖をツン、と引っ張ってリクエストすると、体が浮いた。グレンに抱き上げられている。
仮眠室の窓際にキノコを置くと、寝台にそっと座るように置かれた。グレンの白い毛並みに月の光が当たり、表面が銀色に光った。綺麗だ、とシリルは思った。
服を脱がされ寝台に押し倒されると、すぐにグレンは胸を責めてきた。男の乳首と獣の乳首は形状が似ているのだろう、痛いくらいに吸われたかと思うと、舐めしゃぶられる。
「グ、グレンっ、まだ僕、おっぱい出ないから……っ」
遠回しに断ってみたが、グレンは意に介さず胸の頂きを交互に吸い続ける。胸を押さえる五本指が一気に開き、ぐっ、ぐっと肉球でリズミカルに押してくる。子猫が母猫の乳を出す時の仕草と同じで微笑ましい。
「や、だめ。くすぐったいっ」
体を跳ねさせると、言葉を封じるように唇を奪われた。
「ん……」
股のあいだの小ぶりなものを握られていることに、シリルは気付いた。そこからも尻の隘路からも透明な体液がひっきりなしに漏れ出し、シリルが発情していると体で告げる。シュッと音を立てて陰茎をこすり上げられ、声を必死で押し殺した。自慰をしたこともあるが、発情時はだれかの熱が欲しくて仕方なくなるし、それが一番治まるような気がする。
「首輪が邪魔だな。……うなじが舐められない」
鎖骨のくぼんだところと乳首を往復しながら、グレンが呟く。
「母さんに預けてるんだ。で、でも……んっ、グレンと一緒になるって報告がてら鍵を外してもらうよ」
「シリル、そこまで考えてくれているのか。……俺と番になっていいのか?」
「……はい」
体の上に屋根のように覆いかぶさる、ひとまわりも大きな獣人を見つめる。曇りのない澄んだ瞳は、雨上がりの青空のようだ。
「シリル、もうだれにもふれさせない。小さい頃から、ずっと好きだったんだ……!」
「あ、グレンっ」
ぎゅっと、体が軋むほど強く抱きしめられる。首を噛む代わりに、グレンは体のくびれた場所に何カ所も甘噛みの痕を残した。手首、肘、足首に膝。どれも痛くない注射のようだった。そして乳首と性器にひときわ優しい噛み痕を残すと、グレンは片手でシリルのものを擦り上げながら、もう片手で双丘の隙間に手を差し入れた。すでに自らの体液で濡れていたそこは、簡単に侵入を許してしまう。
「気持いいところが分からないから、言ってくれると助かる」との言葉通り、おそるおそるといった動きでシリルの中を探られる。
「あ……んんっ!」
入ってすぐに、瞼の裏がチカチカするような気持よさに見舞われた。グレンの袖を引っ張って意思表示すると、「ここか……」と念入りにいじられた。「この前も、ここに指を入れて欲しいと言われたな」とグレンがひとりごちて、自分はなんてことを付き合ってもいない幼なじみに言ったのだろう、と顔が熱くなった。
だんだん息が苦しくなってきて、すべての快楽を与えるグレンを抗議するように見つめた。尻孔から得体の知れない汁がトロトロと染みだして、下肢を中心に蕩けてしまいそうだ。泣きたい。今泣いてしまえば、この昂ぶる気持はきっとましになるだろう。真剣な顔で自分を見下ろす豹獣に月光が降り注いでいる。まるで銀色に発光しているようだ。今、シリルはこの王者にすべてを委ねている。
「グレン。グレン……っ」
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