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Ⅴ もう一つの運命②

零!! 《アヴァロン》が守ってくれる。 兄上の機体が。 「お前に俺の命をあげるから。お前の命を俺にくれないか」 心臓が軋んだ。 兄上がいないから…… 俺の生涯でたった一人の運命のαの命の灯火が消えたんだ。 発作が起こる。 俺の発作を抑えてくれる運命のあなたは、この世にいない。 俺の体、もってくれ。 5分……いや、3分でいい! 「音緒、《アヴァロン FAITH》飛翔する!」 空を映す羽が蒼穹を駈ける。 撃ってくる。 飛空挺が。 シンが。 《リュムナデスの火》を 光に焼かれる前に飛空挺を落とす。 「了解。メタルコア発動、燃え尽きる前に」 「光を刺そう。俺達の手で」 《リュムナデスの火》が《アヴァロン》に落ちる。 この世界はひどく閉塞していて。 仮初めの平和にすがってでも生きたくて。 それでも、 生きたいと願う人がいる限り、未来はなくならない。 左腕をもがれた。 右脚を落とされる。 片翼が折れても、まだだ。 まだ飛べる。 届け、俺達の火よ。 折れるな。 朽ちるな。 空へ飛べ!! 右手のビームサーベルごと、飛空挺《リュムナデスの火》発射口熱幹部に突き刺さる。 「全速離脱!」 いけない。火のまわりが速い。 爆発に飲まれる。 (心配ないよ……《アヴァロン》がお前を守る) ………………兄上? 「音緒!!」 俺は鼓動を聞いていた。 あなたの…… お前の…… 鼓動に包まれて……

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