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運命の番
「ロウ、俺を抱けよ。もういい加減に番にしろよ。お前は獣人のアルファなんだろ?なら丁度いいじゃないか」
「言うな、トカプチ……どんなにオレが我慢していると……半獣の狼と交わったら、お前は二度と人間の世界に戻れないのに、それでもいいのか」
「分かっている。もう承知の上だ。どうやら俺の乳がお前の生きる糧になるのと同様に、実は……お前の精液が、俺の生きる糧になるようだ」
「なっなんだって?それは本当なのか」
昨夜のことだ。
ロウがひとり放った白濁の液体が岩場にぽたぽたと落ちているのを見つけ、それを本能の赴くまま指先に絡めて舐めてみると、ほんの一口で躰にパワーが漲ったので驚いてしまった。
どんな人間の食事よりも美味しかった。こんなに美味しいものは久しぶりに食べたと感動して震えてしまう程に。
それは……俺達が自給自足できるように出来ていることに、気が付かされた瞬間だった。
お前がアルファで、俺がオメガの理由を見つけてしまった。
なぜ俺がここに連れて来られ、獣人であるロウを受け入れつつあるかという理由も!
つまり『運命の番』だったのだ。
俺たちは……生きて行くために、揃ったのだ。
この地方を『トカプチ』と呼ぶのは何故か。
「乳」という語源の他に「水は枯れろっ 魚は死ねっ」という妖精の呪いの意味があると聞かされた。だから……植物は育たず湖も凍る、生き物がほとんど生息しない氷の大地で俺が生きていくためには、お前が必要不可欠だ。
「本当にいいのか。オレは半分、狼だぞ」
「そんなの……もう、百も承知だ」
俺はロウの獣の唇に、初めて自分からキスをした。
ロウは驚いて目を見開き、そのまま低く唸った。
次の瞬間、ロウの中で何かが弾けたようだった。
「オレの躰がお前を凍死させないか心配で、抱くに抱けなかった。だがもう我慢できない!」
藁の上でシーツだけを纏っていた俺の躰は、あっという間に征服されてしまった。乳首を吸われれば、腰が浮くほど甘美な気持ちになり、ロウの手で脚を掴まれ左右に大きく広げられるポーズを取らされると羞恥に震えた。
「ロ……ロウ、待てって……落ち着け」
「ウゥ……ウォォォ」
武者震いするロウの口からは、もう獣の唸り声しか聞こえない。
スイッチの入った獣を制止する術なんて、あるはずないじゃないか。
それに……俺の躰を隈なく愛撫するロウの毛は、もう冷たくなかった。
むしろ汗で生暖かく湿っていた。
そのまま四つん這いにさせられ、腰を持ち上げられ、ロウの獰猛に暴れるものを一気に穿たれた。
「あっ……うぅ……」
意外にも、そこは人のものと変わらず……いや、人のものなんて知らないが……ぎゅうぎゅうと狭い器官へめり込んでくるのは苦しいが、次第に気持良くもなってきて、変な声を出してしまった。
「あっ……んっ……っ」
「へぇ……いい声で啼くんだな。人間の男とは……」
「な、に、を……あっ」
こんな服従のような四つん這いのポーズまで取らされ、どっちが獣だか分からない状態にまで堕とされていく。自ら堕ちて行く。
「オレの番になれ!」
背後からガバっと覆い被さったロウに、首筋をガリっと確実に牙で噛まれた。
「あぁっ!痛っ!」
その瞬間なんとも愛しそうな目で、ロウが俺を見つめてきた。
「トカプチ……お前の乳だけでなく、お前の全部を愛してる。悪いが……もう元の場所には帰せない」
さっきまで氷柱のように冷たかったロウの毛並みが、何故か乾いているように見えたので、思わず息も絶え絶えの身で、ロウの頬に手を伸ばしてみると……毛並みがモフモフ、フサフサとくすぐったかった。
「あれ?冷たくない……なんで? お前の毛……温かい」
「おそらくトカプチを愛するために、躰が変化したのだ。愛する番を守るためなら、オレはいかなる姿にもなる、なって見せる!」
「全く……ロウ……お前みたいな狼……見たことがない」
「ふっ……また乳を飲んでもいいか」
「あぁいいよ。俺もお前に沢山注いでもらって、満たされたから」
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