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灰色生活に終止符を
―――3月1日。
椿は今日は3年生の卒業式で、通常より少し早く帰ってくると、朝出かけるときに言っていた。
午前中のうちにオムライスとコーヒーゼリーを作らないと。
2月14日。
バレンタインを知っていたら僕も椿にチョコを渡したかった。
お世話になっている人への感謝。
好きな人にチョコレート送る。
椿には何もかもお世話になりっぱなしだ。
感謝の気持ちを伝えたかったし――それに好きとも伝えたかった…。
いやそれは駄目か。
椿は僕のことなんて恋愛感情で好きではない。
僕のことは弟みたいなものだと思っているはず。
うん、それは伝えちゃいけない。
僕はもう何度も作る椿の好きな少し甘め卵のオムライスを作り、コーヒーゼリーも作って冷蔵庫の中へと入れた。
「よし、出来た」
つばきのために作る最後のオムライス。
明日の椿の誕生日までいようかなとも思った。
でも一度決めたことを変えるのも、出て行くという決心が鈍りそうで、結局、今日この家を出ることにした。
―――それじゃあ、俺の誕生日に俺の好きなもの作って祝ってよ
好きなものは作ったけど、一緒に祝うことが出来なくてごめんなさい。
僕は封筒に入れたバイトで貯めたお給料と椿には内緒で編んでいたマフラーを机の上に置いた。
最初に名前を教えてくれたとき、椿の花の写真を見せてくれた。
その時の赤色の花が綺麗で、思わず赤色の毛糸でマフラーを編んでしまった。
そして最後に、置き手紙も机の上に置いた。
椿と出会う前は、ひらがなしか読み書き出来なかったのに、つばきのおかげで漢字読み書きできるようになったし、計算だって出来るようになった。
つばきのおかげでたくさん知らないことを知ることが出来た。
僕はつばきのことをこれから先も忘れることはない。
そう断言できる。
先生になるという夢に向かって頑張るつばき。
これからも応援しよう。
つばきみたいに僕もやりたいことを見つけよう。
あんなに生きる希望もなかった僕。
でも今は違う。
これも全部、つばきのおかげだ。
椿の部屋を掃除して、玄関の扉の前でもう一度誰もいない部屋に向かってありがとうと呟く。
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