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第13話
たくさんたくさん、気持ちの良いことをした。
サラサラの寝台の上で、気持ちよく目が覚めたら、隣にガートがいた。
腕をつかんでいるのかと思ったら、ガートの尻尾を握っていた。
先っちょがちょっと曲がっている、カギ尻尾。
「目が覚めた?」
ガートが目元に唇を落とす。
くすぐったくて、くふくふと笑ってしまう。
「ねえ」
「ん?」
「グラナーテが、御館に連れていかれるとき、ガートもいた?」
「ああ」
「守ってくれようとしていたの?」
「グラナーテは、オレのものだと、あのころから知っていたから」
ガートは、生家の隣にいたのだという。
いわゆる幼馴染。
混合種族だけれど、限りなく全きネコ種に近いガートは、早くから分化していた。
アルファに。
そして、グラナーテが番だと、知っていたのだって。
「まだ子どもで、力がなくて、オレの番なのにって、気が狂いそうだった」
ちゅ、ちゅ、と髪に口づけをしながら、ガートは言う。
御館に入り込む任務を引き受けて、まだそこにいるのを見た時、なんとしても助けようと思ったって。
「なのに、いざ決行となったら、藍さましかいないし、行方知れずになるし、どうしようかと思った……」
「ありがとう」
「ん?」
たくさん怖かったの。
藍がいないと不安で何もできなかったの。
でも、今。
なんでもできる気がする。
あなたが確かに、ここにいてくれるから。
「ずっと好きでいてくれて、ありがとう。名前をくれて、ありがとう」
「だって、番だから」
「番になってくれて、ありがとう」
何遍だって、繰り返して言うよ。
だって、確かに幸せなの。
あなたがいるから。
あなたが、グラナーテの、確かなもの。
グラナーテを、確かにするもの。
「ガート、大好き」
そういって、尻尾をぱくんと口に含んだら、ガートの目が本気になった。
いいのよ。
たくさん、気持ちよくなろう?
だって、ガートとグラナーテは、番なんだから。
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