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第3話

「あんたら、なんだよ? ここは日本じゃないんだよな?」  話が通じるかわからないが、思いついたことを話しながらそっと後退する。  熊はのしのしと遠慮なく碧馬に近づきひょいと手を伸ばして碧馬を捕えた。殺されるんだ、とぎゅっと目を閉じたが、痛みは襲ってこない。  おそるおそる顔を上げると、そのまま荷物のように担がれて森の中へと連れて行こうとする。 「やめろよ、離せって」  元いた場所から離れたくなくて碧馬は暴れた。帰り道がわからなくなる気がして、ここから移動したくなかったのだ。  拳にした手で思わず熊の背中を殴りつけると、熊が足を止めた。  はっとして手を止める。  どうしよう、殴っちゃったよ。  今度こそ殺されるのか?  青ざめていると乱暴に地面に下ろされた。足首の痛みに耐えきれずその場に崩れ落ちる。  そして驚くことが起きた。  目の前の熊の姿がゆらりと揺れたかと思うと、一瞬後には大柄な体格の男が立っていた。  「※※※※※」  何か話しかけられたが、碧馬はもうパニック寸前だった。  熊が話したかと思うと人に姿を変えたのだ。  夢なら早く醒めてくれ。  必死に願うが、目の前の男はにたりとタチのよくない笑みを浮かべて、碧馬の衣類に手を掛けた。 「な、なに、なんなの、あんた。人なのか?」  男は答えず、碧馬のシャツとベストを一気に引き裂いた。  びくっと体が跳ねた。  男が覆いかぶさって来た。  殺されるのだと思い込んだ碧馬は腕を突っ張ったが、そんなものは何の抵抗にもなりはしない。  男がズボンと下着もはぎ取った。強い力で一気に布地を引き裂いて身をむかれ、碧馬は体を竦める。殴られるのを覚悟したが、痛みは来なかった。  靴下と上靴だけになった碧馬は、呆然と自分の上にいる男を見あげた。目が合った男はにやにやと下卑た笑顔を浮かべた。ゾッと一気に鳥肌が立つ。  ここに至って、男が自分を殺そうとしているのではないことに気づいたのだ。 「え、おい、俺は男だからな!」  もしかして女だと思って連れ去ろうとしたのか。  かわいいと言われ続けてきた女顔を誤解したのかもしれない。でもほぼ全裸なのだから、間違いだとわかったはずだ。  すこしほっとしたのも束の間、男は無遠慮に碧馬の胸から下腹部までをなで下ろした。そして胸の突起を指先で押しつぶす。 「おい、わかっただろ、俺は男だって言ってんだよ!」  体をねじろうとするが、開いた足の間に大柄な体を入れられてそれはできない。  碧馬がじたばたする様子を見下ろしていた男はにやにやと好色そうな笑みを浮かべたまま、腕から袖を抜き上半身を押さえつけた。そのまま胸や腹を撫でまわされる。 「おい、何してんだよ」 「※※※※、※※※※※」  何か卑猥なことを言われたのだと口調でわかった。  碧馬の顔から血の気が引いた。  男でも構わないのだ。そういう人間がいることを知識としては知っていたが、実際に遭遇したのは初めてだ。いや人かどうかもわからない、だってさっきまで熊だったのだ。

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