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第6話

美しい一人の人間が振り返る。 リビトだった。 『やっと、俺を見つけてくれたの?アレク』 目の前にはレイしかいないのに。 リビトの記憶を二人で共有している。 レイのフェロモンが、アレクにはひどく懐かしいものに感じられた。 ああ、わかった。 アレクは静かに理解する。 もし、この世に生まれ変わりというものがあるのなら? レイこそリビトの生まれ変わりなのではないか? リビトの残した最後の言葉。 『アレク……俺は生まれ変わる。そして、何度でもお前を愛し、お前の元に還るよ。……約束する』 アレクは思い返す。 この学園に保健医として赴任した時のことを。 リビトを救えなかった罪滅ぼしのため、多くのΩに寄り添いたいと思った。救いたい。助けたいと思った。 その気持ちは嘘じゃない。 だけど、本当に救いたいのは……。 「Ωなら誰でもいいわけじゃない。レイ、たった一人のお前を救いたい。いや……」 そんな生易しい想いじゃない。 この想いは……。 「愛している」 獣人の野性味と愛しさの滲む眼差し。 レイはアレクをカッコいいと思った。 「レイ……お前を愛している」 愛している。 その言葉はレイの心を救いあげ、温かい光で満たした。 もうそれだけでいい。 その言葉、気持ちだけでいい。 レイの頬を、嬉し涙がいくつも伝った。 幸せすぎた。 レイはアレクの鼻先に唇を寄せる。 アレクもレイの唇を舐めた。 獣人と人間が交わす愛のかたち。 レイの頬を涙が伝う。 獣人の目にも光るものがあった。 思えば最初から運命だった。 強く惹かれあったのも、求めあったのも。 輪廻を超えて、再び今世で巡り会う。 「レイ……。私の魂の番……。今度こそ離さない」 アレクがレイを抱きしめる。 この上ない幸せを感じて、レイは獣人の胸に顔を伏せた。 ――――

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