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第43話 我儘

 ずっと、こんなふうに、触りたかった。郁のこと、こうして。 「っ、文」  触りたくて仕方なかった。  硬くて、熱い。きゅって握ると、すぐそこで郁が息を詰めて、何かを堪える。しかめっ面がすごく色っぽくて、僕はその薄く開いて声を零す唇を見つめて、何度か喉を鳴らしてた。 「は、ぁ」  荒い呼吸がもっと乱れるのが嬉しくて、眉間の皺にすら見惚れてたら、目が合ってしまった。苦しそうに俯きがちだった郁と、そこで視線がぶつかった。  つい、見惚れてしまってた。僕の掌に感じて、夢中になる、僕の男に。 「いっ、てぇ」 「ごめっ」 「ちがくて。そのまま、触って」  力入れすぎた? うっとりとしながら扱いてたら、痛いと言われて慌てて手を離そうとした。でも、郁は不敵に笑って、その引こうとした手ごと、自身のペニスを握り締める。硬く張り詰めた熱をもっとぎゅっと握らされて、熱が移って、僕も、熱くなる。 「もっと、触ってよ、文」 「あっ……ン」  郁の指がまた。 「やぁっ……ン」 「文の手、すげぇ気持ちイイ、声も聞かせて、感じてるかわかるから」 「あ、やだ、恥ずか、ぁっ」 「文の声、好きだよ」 「あぁっ、ぁっ……ン」  孔に指が、今度は二本、すんなりと入って、擦られて、中を掻き乱される。 「やぁぁぁっ」  股を開いて、奥の、今日始めて暴かれた孔を指で柔らかくほぐされながら、僕は、その孔にもう入ってくるかもしれない、熱くて硬いペニスを背中を丸めて、手を伸ばして、握り締めてる。  やらしい音。くちゅくちゅって。  指は、もう知ってしまった僕の声が糖度を増すポイントばかりを攻めてくる。  はしたないかな。指に甘えて、腰を揺らしながら、あんなに冷たかったローションを普段の体温以上の熱に染めるほど悦がってるなんて。滴ってるのは潤滑液なのか、先走りの体液なのかわからない。。 「文が触ったとこ、全部、いてぇ」  郁に、とても感じてる。  指で、こんなに気持ちイイのなら。 「ね、郁」  君のこの硬くて熱いので、刺し貫かれたら。 「あっ、ン」  どんな心地なんだろう。 「文の掌、すげ、気持ちイイ」 「あっ……郁」  僕も、だよ? 郁の指、すごく、気持ちイイ。そう答える代わりにとても甘い甘い声をあげた。  きっと、今お互いに同じことを考えてた。ずっと想像している。  もしも、君のペニスに抉じ開けられたら。  もしも、貴方の中を抉じ開け、貫けるなら。  どんな快楽なんだろう。 「文っ」 「ぁ、ン」  首筋に噛み付かれて、長い指を孔できゅんって締め付けた。差し出すように背を反らせたら、今度は乳首に歯を立てられて、さっきされたせいで敏感になってるそこにビリビリとした刺激が走る。噛まれて、感じてる。 「ン、郁っ」  郁が触ったとこ、全部、気持ち良くてたまらない。あまりに気持ち良くて、痛みにも似てる快感におかしくなりそう。 「郁っ」  郁の舌にしゃぶりつきながら、ペニスを両手で握った。郁のペニスを両手で握って扱いてる。自分のと太さも形も違う、郁のを。 「郁、郁っ、郁」  郁を欲しがった。 「あっン」 「脚、そのまま開いてて」  孔に刺して欲しいって。このペニスで抉じ開けてって。 「痛かったら、俺のことも、痛くしていいから」 「あっ」  覆い被さられて、脚を開いたところに、郁が来て。ゴムをつけてる。それを見つめてたら、郁も僕を見て、少し照れくさそうに笑ってキスをした。  これからする行為に、お腹のところがじんわりと熱を持つ。ついさっきまで、触れちゃいけなかった君。今から、その触れちゃいけなかった君と。 「……文」  ねぇ、郁。 「挿れるよ」 「あ、ぁっ……あっ」  痛みなのか快感なのかわからないくらいに気持ち良過ぎたら? 「あぁっ、……ンン、ぁっあ」  そしたら、どうしたらいいの? 「っ、文」  ゆっくり開かれた身体に、指よりもずっと太いのが、入ってくる。僕の中に、郁がいる。僕の中が、こんなに、郁でいっぱいになる。 「あっ……ン」 「っ」  熱いよ。 「ぁ、あっ、あ」 「きつ……」  指じゃ届かないところは、強くしないと抉じ開けられない。だって、そんなとこ、僕自身すら知らない奥だもの。 「ン、へ……き、もっと、来て?」 「っ」  痛かったら、郁のことも痛くしていいんでしょう? 「ぁ、ぁっ、あ、あああああああっ」  だから、しがみついて、引っ掻いた。ズンって、重さと熱に、身体の中心が抉じ開けられて、焦がれた背中に爪を立てた。 「ごめ、郁……ン、でも、ぁっ……ン、嬉しい」 「……」  郁の背中にひどいことをした爪で、今度は自分の下腹部を撫でる。 「ここに、郁が、ぁっ……ン、ぁ、あ、っン」 「これ、ヤバい」 「あぁン」  抱いて欲しかった、ずっとずっと、郁にこうされたかったんだよ? ねぇ、郁。 「ぁ、あっ、ん、すごい、よ」 「っ」 「ぁ、ぁっ」 「文っ」  郁にこうして揺さぶられたくて、切なくなったんだ。 「あぁっン」  この肩にしがみついて、奥深くまでペニスでいっぱいにされたかった。 「あっあっ、ン、ぁんっ……郁っ」  激しく突かれてしまいたいと願った。 「文ん、中、すげぇ」 「ほ、んと? 郁、気持ちイイ?」  快感を貪りあってみたいって、はしたないことばかり考えた夜はたまらなくて。 「あ、ぁっン、ぁっン」  うなじに噛み付かれて、乳首をきつくいじられて、奥をね。 「やぁっ……ン、乳首、ダメ、コリコリしてる、からっ、ひゃんっ」 「文」  狂おしく突かれたいって、思ってた。 「ぁ、ン」  まだ高校生だった郁に抱かれることを想像して慰めてた。  待ってって言っても、抱き締めたまま攻め立てられて喘ぐ自分を想像して、身体を火照らせてた。 「……郁」  同じ歳の高校生がきっと今頃、どこかで卒業を祝ってるよ。 「郁っ」  けれど、僕らは、うちに篭もって、こんな――。 「ねぇ、文……」 「……?」 「俺は、貴方好みの男に育った?」 「……」  男の顔をした郁と、こんな、ひどくやらしくて、いかがわしい行為に溺れてる。  熱っぽい溜め息をついて、片手をついて、もう片方の手で僕の脚を押し広げながら、郁が笑った。額に汗を滲ませて、恋しいと孔がヒクつく度に、少しだけ表情を歪ませてる。  たまらなく、興奮した。 「ぁっ……」  少し身じろいだだけで濡れた音が卑猥に響く、いやらしい性行為に。 「貴方の」 「好き」  したかったんだ。ずっとずっとしたかった。このひどく卑猥な行為をしたくてたまらなかった。罪悪感なんてもの知らないよ。そんな理性はもうとっくに溶けて流れて消えてる。欲が深くて、そんな理性はその深い底に沈んでしまった。 「文……」  手を伸ばしたら、背中を丸めて、首に掴まれってしてくれた。欲しいだけ貪らせてくれる。口付けて、気持ち良さそうに喘ぎたい僕の乳首を噛んで舐めて、乱れさせてくれる。首筋に僕の欲しい印を刻んでくれる。 「文」 「郁は、僕の……」  きゅぅんってしがみ付いて、ずっと独り占めしたいほど愛しい僕の男。 「だから、もっとして……」  そんな我儘を言ったら、郁が目を細めて、シャワーのせいなのか、汗なのか湿った、僕の前髪を手でかきあげてキスをした。 「あっ、ンっ……んんんんっ僕のっ」  郁の太くて硬いペニスで、たくさん掻き混ぜて。 「ぁ、ぁっ」 「文」  激しく揺さぶられながら、貪欲にしがみついて、奥深くを抉られたいと中で絡みついて。抉じ開けて。  ずっと独り占めしたかったんだ。 「あ、ン、郁……もっ」 「っ、文」 「ぁ、あっ、ああああああああ」  激しく貫かれる悦びに、甘く甘く啼きながら、愛しい男の背中に、また、爪痕を刻みつけた。

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