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第1話

『いいか、恒輝。先生は、北極星という意味を込めて恒輝の名前をつけたんだ。お前を抱き上げあげたとき、見上げた空で北極星が瞬いた。お前は星に見守られている』  自分は生まれてすぐに養護施設の前に置き去りにされ、親の顔を知らない。  恒輝という名前も、養護施設「沢田園」の園長がつけてくれた。  言い知れぬ孤独と、どこか埋まらない心の隙間を抱えていた自分に園長は何度もこの名前の由来を話してくれた。  北極星の周りにはたくさんの星がある。それと同じで恒輝も一人ではないのだと。  園長は励まそうとしたに違いない。北極星は常にそこにある。そして周りには無数の星があるって。  しかし、当時はその北極星すら孤独に思えてならなかった。  周りに無数の星があったとしても、周りは動き続けるのに北極星だけは動けない。 (そんなのは一人と同じだ)  そんな風にしか思えない自分はおそらくとても寂しがりだし愛されたがりなのだろう。  自分が理想とする愛情なんて夢の中にしか存在しないのもわかっていた。  誰と付き合っても、誰を抱きしめても、何をしても埋まらない。  自分が求める愛情は果てなく欲深い。それを与えてくれる人なんておそらくいない。夢で見たあの狼の少年のような人なんて所詮は夢物語である。  現実なんてきっとそういうものなのだ。

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