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最終話

 ハクの診察のあと、開口一番に子供はできているかと聞いたヴァシュカだったが、それは次の発情期の時期にならないとわからないと言われ耳を垂らしてしょんぼりしている姿は少し可愛かった。  慌てるハクは気の毒だったけど。  ヨハンは自分で作ったというトランプを見せてくれた。  キングは国王陛下、クイーンは王妃陛下、そしてジャックにはヴァシュカとその兄弟の絵が一枚ずつ描かれていて、よく出来ていた。 「ヨハンが描いたのか。とてもよく似ている」 「家族にも好評だったのです。今では家族で取り合いになっています」 「それならばこの際、生産してみるというのはどうだ。国王陛下も興味を持たれていた」 「え、そんな私のようなものが勝手に描いたものなんて、叱られてしまいます」 「ちょうどコウキが魔法のように混ぜることを話したら両陛下とも見てみたいと仰ってな、それなら王家の絵柄のトランプの方が喜ぶと思うぞ」 「そうでありますか!」 「ちょっと勝手に話を進めるな!」  そんなこんなで、番になりましたと報告するのと同時になぜか両陛下の前でリフレシャフルを披露することになりそうで恒輝は頭を抱えた。  しかしヴァシュカもヨハンもハクも自分の目に映る全ての人が笑顔なのでそれもいいかと思った。  番にしても妊娠にしてもまだまだ不安なことばかりなのだが、ふと未来の子供のことを想像する。  ヴァシュカに似た子になるだろうか。 「どうしたのだ」  ヴァシュカが恒輝の顔を覗き込んだ。 「どんな子が生まれてくるのかなって想像してた。銀色の毛並みの子かなぁとか」 「そうしたらコウキの毛布がもう一枚増えることになるな」 「さっきのまだ根に持ってたんだ」  くすりと笑えば、少しふて腐れたヴァシュカも優しく微笑んで恒輝の肩を抱く。 「もし、その王家印のトランプが流行したらポーカーハウス作ろうよ。俺がディーラーやるからさ」  するとそれを耳にしたヨハンは、自分もディーラーをやりたいと手を上げた。  ここはとても温かい。  絶えることのない笑い声は恒輝の心を軽くした。  自分はもう、孤独では無いのだーー。  そして腹に手を当て、まだ見ぬ未来の子供にも笑顔でいて欲しいと心から願いながら、愛しい人の横顔を見上げ恒輝は微笑んだ。  その後、王都で国王王妃両陛下と王太子殿下を始めとする四王子を描いた王家印のトランプが販売され大流行したのはしばらく経ってからのことだった。  それによって王都初のポーカーハウスができるのだが、その話はまた今度ーー。     終

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