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第13話
最大10連休のゴールデンウィーク。
大学も退位や即位の日は休講で、早速長期の休暇がやってきた。
噂じゃ夏休みがその分短くなるらしい。
それでも2ヶ月も休みがあるんだから十分過ぎる。
一抹の不安と言えば母親だ。
もう何時生まれてもおかしくない。
何時も通り階段を最上階までのぼり、呼吸を整えてから呼び鈴を押した。
インターホンもあるが、自分は使われた事がない。
宅配や郵便では使っているのに。
ガチャ…
「おはようございます。」
「ん。
おはよ、遥登。」
ぽんっと頭に手を置かれ優しく微笑まれるこの瞬間が好きだ。
「挨拶は良いから入れよ。
雨降ってるから寒いだろ。
ほら、どうぞ。」
「あの、お世話になります。」
「お世話します。」
傘を立て掛け、靴を脱ぐと早く早くと手を引かれリビングに連れていかれる。
子供みたいなこの行動も好き。
リビングに入ると窓から入る日の光に髪がキラキラと光を通す。
その頭をマジマジと見ると髪を染めたのか目の前の頭は綺麗に染まっていた。
寝起きのままの髪。
そうか、もうセットされた髪型の方がレアになるのか。
「どうした?」
思わず手を伸ばしてしまった。
「あ、すみません…。
髪染めたんだなって思って…」
「謝る事ねぇよ。
ほら、染めたて。
どうだ?」
長岡はそう言いながら旋毛が見える程に頭を下げてくれた。
サラッと動く髪と長岡のにおい。
手櫛を通すとシャンプーのにおいが微かにする。
「とても格好良いです。」
「マジか。
遥登に褒められると嬉しい。」
「とても似合ってます。」
嬉しそうな長岡は満足そうに口角を上げた。
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