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第15話

コーヒーの香ばしいにおいが満ちる台所スペースで何度も甘やかされた三条は漸く恋人の補充が出来てきた。 満タンになる事はないが、沢山触れられ、焦れていた分は取り戻せている。 これは、長岡にしか出来ない。 そして、長岡を満たす事は三条にしか出来やしない。 「ほら、牛乳。」 「ありがとうございます。 いただきます。」 手渡された牛乳を注ぐと少しぬるくなったそれを持って定位置に向かう。 机の上に、近くの書店に売ってなかった雑誌を見付け三条は目を大きくした。 「正宗さんっ、この雑誌読んでも構いませんか?」 「どうぞ。 食い付いたな。 それ、新作載ってんだよな。」 「ありがとうございますっ」 マグを置くと手が塗れてないのを確認してから手に取る。 パラパラっと捲るとそのページはすぐに見付かった。 新作だ。 相変わらず言葉選びが面白くて、その世界に深く入り込む。 インタビューもじっくりと読んでいく。 それこそ、舐めるように。 そんな三条を見守る長岡はコーヒーを一口含み口を湿らせた。 長岡も、楽しそうな横顔を会えなくなった平日分眺める。 まるで子供だ。 そっと手を伸ばし指の背で頬を撫でると驚いた顔をした三条が此方を向いた。 「え、なにか…?」 「いや、子供みたいで可愛いなって思ってな。」 頬杖を付いてふわりと目元を緩めた長岡の格好良さにきゅぅぅと胸がときめいた。

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